言葉のリハビリ場

特にテーマはなく、ざっくばらんに書いています

イカの三升漬という食べ物

イカの三升漬という食べ物がある。

f:id:fwbc0416:20200918220618j:image

イカを麹や醤油、そして唐辛子を合わせた調味料に漬け込んで作られる食べ物で、イカが入らずに単に「三升漬」という食べ物(というか調味料? )として扱われることもある代物である。北海道や東北の食べ物として知られているが、水産加工の盛んな地域では前述のイカ入りの三升漬が良く作られていて、私の場合はこの食べ物には西伊豆の民宿で出会ったのだった。
イカの塩辛とはまた全然違う味の食べ物なのだけれど、ご飯がめちゃくちゃ進むおかずとしてはほぼ役割が同じである。もちろんお酒にも合う(というかたぶんメインはそっち)。
西伊豆で食べられるイカの三升漬というのは、いろいろなパッケージのものが存在するがどうも2つの会社が作っているようである。
一つは沼津市内の比較的大きな水産加工業者のもの。笹原水産という会社で、沼津市の市街地から少し南の静浦(口野放水路の脇当たり)に工場を構えている会社だ。
イカの三升漬と検索すると、ネットショッピングでも扱われていたようなものである。沼津駅や、沼津港で気軽に購入できるものだった……のだけれど、今年の前半、この会社が倒産してしまったというニュースを見つけてしまった。倒産理由等はわからないけれど、ともかく一番有名な方の沼津の三升漬メーカーが無くなってしまったのである。
西伊豆で食べたもの(正確に言えば、静岡県松崎町というところ)はどちらかと言うとマイナーなメーカーな物らしく、店で売って販売箇所もいるのをほとんど見かけたことがない。なんとか温泉協会、と書いてあった気がするから、メーカーであるかもよくわからない。
雲見温泉という小さな温泉街の鮮魚店にあったような、それか沼津市の南端の戸田地区の道の駅で見たことがあるような気がするとか、その程度である。今思えば見つけた時に買っておけばよかったな、と思うが、なかなかあの辺りに行く機会もなく、また戸田に関しては次に行ったときには置いてなかったから大変惜しいことをしたものだ。

そうするともう、イカの三升漬を沼津で買うことはできないのかな、とあきらめかけていたのだけれど、この間青春18きっぷ消化のために沼津に拠った際に、駅のスーパーで笹原水産の三升漬が売られているのを見つけたのである。半年前になくなった会社だけれど、まだ在庫があったのだろう。賞味期限を見ると9月半ばだったことからも、割と最後の方のロットというか、新しいものではないようである。
これはよかった、と思って購入して家に帰った。

もう食べられないと思っていたのでこれは嬉しいと、さっそくその晩に食べてみたのだけれど、食べてみてびっくり、麹の作用だろうか、かなり熟成が進んでいたようで、味が非常に酸っぱくなっていた。悪くはないけれど、熟成が進みすぎている感は否めなかった。
おそらくだけれど、結構近くの旅館とかでもこの三升漬を使っていた様子があって、その納入も今こんなご時世ではなかなかに減ったしまっているんじゃないだろうか。だからこそ、店に出回る分の在庫がまだ少し残っていたんじゃないかな。そういうものを私は買ったんだろうな、って。
もう同じ味が食べられないと思っていたところに、最後であえて嬉しかったけれど、もう同じ味ではなくなっていたのが寂しいような、悲しいような……。でもまあ、こうして食べられたからよかったと言えばよかった、かな。


知らぬ間に無くなっているよりはずっと。

どこかで買えないかな、また。