言葉のリハビリ場

特にテーマはなく、ざっくばらんに書いています

魯肉飯を探して金沢へ

魯肉飯という食べ物がある。私はこの食べ物が好きだ。

 

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"台湾の代表的なかけご飯"とWikipediaにかいてあるけれどまあそんな感じだ。台湾で食べられるものの中で1番好きだと言っても過言ではないくらいには好きな食べ物であるのだけれど、この魯肉飯という食べ物、日本で食べようとするとちょっと想像と外れてものが出てい来ることが多く、いつもギャップに苦しめられている。いや、勝手に苦しんでいるだけなんだけれど、とにかく想像しているものと同じものが出てきたことがなくていつもちょっと不思議に思ってさえいるのだ。
台湾、というか台北だと、どんな店で魯肉飯を頼んでも大抵想像通りのものが出てくる。2年くらい前に3泊4日で旅行した時に都合3回も魯肉飯を食べたのだけど、それがこれらだ。

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台北のどっかの地下街で食べた青菜と魯肉飯

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松山駅台北市)の上にあった飲食店街の魯肉飯

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饒河街観光夜市の屋台の魯肉飯

脂身の多い豚肉を香辛料の効いた濃い目のガツンと来る味付けでクタクタに煮込んで、その脂ごとご飯にかけて食べる。超シンプル料理のようで、奥の深い料理である。
とまあ、前にも書いたけれど、あくまで台北でよく見るスタイルの魯肉飯なんだ、というのは承知している。もっと肉の大きい食べ応えのある際の目状のものや、さらには普通に角煮の状態のものだって魯肉飯だってそれは承知の上である。
むしろいろいろバリエーションがあるのは理解したうえで、なぜ日本で魯肉飯を食べようとすると、上記のような台北で最もポピュラーなタイプの魯肉飯には出会えないのかということなのである。


中華料理と書かれた看板の店に「魯肉飯」の文字が書かれていて、想像と違うものが出てくるのはわかる。台湾料理の店だともう少し期待するけれど、やっぱり想像しているものとは違うものであることが多い。たいていさいの目になっている角煮かチャーシューか、そのあたりが乗ったご飯が出てきて、それを魯肉飯としているものであることが多い。いやまあそれはそれで美味い。美味いし間違いでもないしそれはそれで好きと言えば好きなんだけれど、思っているのとちょっと違うんだよねという気持ちが残ってしまうわけだ。
「とんこつラーメン」という看板を見て博多とんこつを想像しているのに必ず家系ラーメンを提供される、そういう気持ち。どっちも好きだけれど「とんこつ」という文字からはまあ確かにどっちの種類のラーメンが出てきてもおかしくはない、でも想像してたのとは違うそういう時の気持ち。

 

それよりも何よりも魯肉飯である。
食べたいタイプの魯肉飯を探して店に突撃するのもいいが、通販という手段もある。通販であれば写真が載っているので、まず第一関門として肉の大きさや形状はわかりやすいだろう。そういうわけで、Amazonで魯肉飯を検索してみる。
が、思った以上に少ない。少ないし、トップに出てきたS&Bのものは、写真を見るにたぶんほしい感じのものとは違うんじゃないかな、と思うわけである。そぼろご飯ぽいというか、ビジュアルが違うな、というか。しかしながらぱっと出てきたのが4つで、4つとも微妙な感じではある。5個目からは魯肉飯の素(調味料)出汁、6個目はレシピ本である。食べられない。作れということだろうか。……作れるのか? いやまあできるかもしれないけれど、そうするとお目当てのタイプの魯肉飯かどうかを選別する対象がレシピに代わるだけであんまり意味がない。変わってないので、じゃあまあとりあえず、物は試しということで、レトルトタイプの魯肉飯4種類の中から一番それっぽいやつを選んで注文した。
「世界のグルメ旅 シリーズ レトルト食品 (ルーロー飯)」という商品である。「本場の味に忠実でありながら、日本人に受け入れられる テイストを目指し」という商品説明が引っかかったが、まあそれは見ないことにして、それからなぜか出品者が銀座のギフトショップなのも(花とお酒とギフトの店から送られてくる魯肉飯って何?)気にはなったが、まあそれも見ないことにして注文した。
割とすぐ届いたので早速作ってみた。美味い。美味いけれど、やっぱり思った通りそぼろご飯である。豚肉のそぼろご飯が魯肉飯に似た何かの味をしている。言うなれば中華風キーマカレー。美味い。美味いんだけれど、違うんだ。違う……。

気が付いたのだけれど、そぼろっぽくなってしまうのは脂身が含まれていないからなのだ。私の好きな台北っぽい魯肉飯は、脂身と肉が半々くらいなんだろうか、そういったものなのである。煮込んでクッタクタになっているものが多いので見た感じわかりにくいけれど、肉の部分のほかに脂身が意外と形を保っているものなのだ。ここのバランスなんだな。きっと。
とまあ食べる前からたぶん違うなとは思っていたが、やっぱり違ったわけだ。通販路線は少し変えなくてはならない。そう思って色々調べていると、台湾にある魯肉飯チェーンである「鬍鬚張魯肉飯」が日本の石川県金沢市になぜか店を構えているという情報を手に入れた。以前は東京とかにも店があったようだけれど、今では金沢に2店舗を残すのみであるという。
メニューの写真を見ると、今までで一番想像している魯肉飯に近いビジュアルをしている。ほぼそのものと言っても過言ではないだろう。もともと台湾のチェーンなのだから期待度は高いし、俄然興味が出てきた。
通販をやっているというので注文してみたが、注文直後に電話がかかってきて在庫がなくなってしまったのでキャンセル扱いになります、と言われ断念。それが7月頃の話で9月上旬に販売が再開するとの話であったのでおとなしく待っていた。
……が、なかなか再開される気配がなく、それならばもういっそ、とりあえず金沢に行って食べてみてから考えればよかろう! と思うに至ったのである。

 

で、行ってきた。

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東京からだと北陸新幹線で2時間半

金沢駅で新幹線を降りてから、JR北陸本線に乗り換えて一駅、西金沢駅へ。

そこから北陸鉄道石川線に乗り換える。どうでもいいけれど、JRは「西金沢」でそれに対して隣接の北陸鉄道は「新西金沢」、修飾に修飾を重ねていて面白い。

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新西金沢からローカル線に揺られ、といってもわりとすぐ(5分くらい)にある野々市工大前駅というところで降りる。

金沢からの通算所要時間は20分弱。観光地からはずいぶん離れたが、そこまで遠すぎるというほどでもない。

名前の通り金沢工業大学の最寄りの駅らしく、駅前から少し行くと、そこからずっと大学方面の道なりに学生用の賃貸物件だらけである。どこもかしこも大学が指定した住宅である旨を示す青いステッカーが貼ってある、そんな街であった。

学生の街ということなんだろう。聞くところによれば大学以外にも専門学校が2校近くにあるらしい。

駅こそこんな雰囲気だが、

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単線の無人

周りはアパートの多い普通に住宅街だった。


駅から歩いて5,6分くらいで、「鬍鬚張魯肉飯」の看板が現れた。金沢工大前店である。現存する2店舗のうち1店舗がここだ。ここが一応本店らしい。

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マンションの1階で、左隣はコンビニ

手前のカレー屋が2軒あって2軒とも行列になっているのを見て鬍鬚張魯肉飯も行列か!? と身構えたが、さすがに行列にはなっていなかった。近くのラーメン屋とかは特に行列になっていなかったのでどういうことだろうと思ったけれど、あとから調べたらカレー屋が人気店だった。鬍鬚張魯肉飯は別に普通だった。
縦看板の向こうにある川を渡るともうすぐそこが金沢工業大学という立地なのだけれど、学生のような客はほとんどいない(大学がやっていなさそうなご時世だし、休日だったからかもしれない)。どちらかというと休日に食事に来た家族連れという感じで、一人でのこのことやって来た私はちょっと珍しい感じだった。

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書いてある言葉は読めないので雰囲気だけ感じた



本当は壁沿いに一人用のカウンター席があるようだったが、感染対策のためかなくなっていて、代わりに2人用の席に通される。

注文は魯肉飯の野菜セット。魯肉飯に加えて空心菜の炒め物と小皿、飲み物付きのセットだ。青菜か豆苗か迷っていたら、店員さんに空心菜をおすすめされた(期間限定商品のようだ)のが面白かった。素直におすすめの品を注文する。ボリューム感が分からなかったので、スープをつけるか悩んだが一旦やめておいた。
2,3分くらいですぐに料理が運ばれてくる。

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ビジュアル的にはまさに求めていた魯肉飯である。空心菜も本格的だ。メニューに書いていなかった要素としては、唐辛子入りの油があった。辛みが欲しい時にかけてください、とのことである。味変の為ということだろう。
小鉢を少しつまんでから、それから魯肉飯に手を伸ばした。一口、二口、口に運ぶ。……美味い。食べた感じはまさしく私の食べたかった魯肉飯の触感である。ただ、ガツンとくるような味の濃さや香辛料の強い香りはなく、見た目に反して非常に穏やかな味付けであった。
ちょっと別物のような気もするが、今までいろいろ試してきた中では一番台北で食べた魯肉飯に近い存在であることは間違いない。たぶんだけれど、メニューに「ダブルがけ」という項目があったので、これをすればもっと肉が強くなって味の感じ方が変わるかもしれないと思う。ダブルがけ、覚えておこう。
ちょっと味は微妙に想像と違ったけれど、それでもなんだろう、これはラーメンで例えるならばこれまで博多とんこつと横浜家系くらい距離があったものが、熊本と博多くらいの差になったと思う。系統は完全に同じものだ。
これはこれで結構美味いし金沢まで来た甲斐はあった。と思いつつ、空心菜の炒め物に手を出してびっくりした。なんだこれ、めちゃくちゃ美味い。ガツンと来る濃いニンニク醤油味は台湾で食べた青菜の炒め物のそれである。完全にご飯のおかずだ。濃い味がご飯によく合うし、魯肉飯との相性も抜群にいい。


そうか、そういうことなのか、と一人で激しく納得した。魯肉飯にガツンと来る濃い味付けがされていないのは、このセットメニューの為であったのだ。本来、台湾でも魯肉飯は何かおかずと一緒にセットで食べるものである。他に色々頼めるようにちょっと小ぶりのどんで提供されることが多いわけなのだけれど、それを忠実に再現しつつ、濃い味付けでおかずの良さを損なわないようにあえて甘目の味付けにしてある、ということなのである。
ついでに唐辛子の効いた油を魯肉飯の上に少し垂らしてみたけれど、ピリ辛になってこれも美味い。

やられた。完全にやられた。鬍鬚張魯肉飯の手のひらの上で転がされていたということである。
美味すぎてあっという間に平らげそうになったので、追加でスープも頼んだ。白ゴーヤの珍しいスープをすすめられたので、またおすすめされるがままに頼む。

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白ゴーヤと排骨(パイコー・スペアリブの事)のスープだが、これもまたゴーヤのさわやかな苦みが後を引く美味しさだった。台湾風ではあるけど、白ゴーヤは熊本産とのこと。融合技だ。
美味すぎて、会計の時に「スープ美味しかったです、おすすめしてくださってありがとうございました」と伝えたくらいだ。「期間限定だけど、しばらくあると思うからまた来てね」と言われたけれど、しばらくってのはどれくらいなんだろう。わからないけれど、季節メニューならすぐには来れないかな、残念だ。金沢はさすがに遠いからね。次に来るのはいつだかわからないけれど、まあたぶん、年内は来れないかな、と思う。

それにしても金沢でいいものに出会った。わざわざ行ってよかったと思う。あくまで地元の店という感じで、金沢駅からのアクセスなんかはいまいちだけれど、また機会があったら寄りたいと思う。車で行くほうがたぶん簡単なんだけれど、いろいろメニューを見た結果、お酒を飲んでみたい気もするんだよな、ここで。どう考えても合いそうだし。

そうそう、家に帰ってから通販ページをみたら在庫が復活していたので、5食セットを注文しておいた。そういえば、店で取り扱いがあるのか聞くの忘れたな。あったら店頭で買おうと思っていたけれど……まあいいや。送料くらい払うって。

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ごちそうさまでした。

 

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