言葉のリハビリ場

特にテーマはなく、ざっくばらんに書いています

天ぷらの甘辛煮

私は基本的に甘辛の味付けが好きだ。昔からご飯がすすむ甘辛の味付けが好きで、しょうゆとみりんと砂糖を煮詰めたような味付けの食べ物は基本的に大好きだ。

さいころ好きだった食べ物に、「翌日の天ぷら」があった。正確には「天ぷらを甘辛煮にしたもの」である。夕飯に天ぷらが出たときに残ったものを翌朝甘辛煮にして食べるのだ。私はあれが本当に好きだった。当日よりも翌日の方がずっと好きだったような記憶さえある。
ただまあ「好きだった」という割にはあまり食べた記憶がないのは、家ではほとんど天ぷらをやらなかったからだと思う。もしかしたら通算しても2,3回くらいしか食べていないかもしれない。それくらいのレアな出来事であったのに、かなり強烈に覚えているということはよほど美味しかったということだ。
ちなみに前日の天ぷらの方の記憶は全然ないので、甘辛煮の記憶があるということは前日は天ぷらだったんだなという、それほどのものである。

最近甘辛煮の存在を思い出したのは、外でお昼ご飯を何にするか悩んでいるときに、天丼屋の「てんや」のメニューを眺めていた時だった。天丼は結局食べなかったのだけれど、持ち帰りの天ぷらが妙においしそうに見えたのだ。買って帰って夜ご飯にすればいいんじゃないかな、というわけだ。
でも今買って帰ると夜には再度温める必要がある。オーブントースターがないので電子レンジで……となるとどうだろう、衣のサクサク感がなくなるかな、などといろいろ考えているうちに、甘辛煮のことを思い出したのである。
何も翌日しかやっちゃいけないわけではないのだ、甘辛煮を。初日から甘辛く煮て食べてもいいんじゃないか。そうすればちゃんと暖かくなるし、衣がサクサクである必要はないわけで。こいつはいいアイデアだということで私は早速試……そうと思ったのだけれど、その日は昼にうっかり重いものを食べてしまったので天ぷらは見送り、後日試してみることにしたのだった。

思い至ってから2,3日後、天ぷらをテイクアウトした。日中家から出られなかったので、UbarEatsで持ってきてもらった。
注文から3、40分後くらいなのに案外暖かいし衣もサクサクだったけれど、まあいいや、と私は甘辛煮にすることにした。付属の天つゆがもったいないのでそれをベースにして、みりんと砂糖、しょうゆを加えて適当に煮て、白だしとかめんつゆとかで適当に味を調えたらそこに天ぷらを投入して甘辛く煮ていく。翌日でもなく当日だけれど関係ない。かつ丼だって揚げたてをいきなり煮たりするし、ああいう感覚だ。ここに溶き卵を入れたら「天とじ丼」だよな、とかなんとか思いながら汁気がなくなるまで煮て完成した。めちゃくちゃ楽。

見た目は割とデロデロになるので最悪なんだけれど、まあそういうものだから仕方がない。見た目は天丼を下回るけれど、正直天丼よりも好きだと思う。普通に塩とか天つゆとかで食べるよりもずっと好きな食べ方かもしれない。ただし天ぷら的な良さみたいなものはほとんどなくなるけれど。
それにしてもご飯の進む味だ。甘辛い味が衣に染み渡っていて、最高においしかった。本当に昔食べたことのある感じの味になったので割と感動した。これだよな、これこれ、とすごく思った。天ぷらを作らずしてこの甘辛煮を食べることはないだろうと勝手に思い込んでいたところはあったけれど、何のことはない、初日から煮てしまえば良いのだ。

問題があるとすれば、なんとなく食べているときに罪悪感を感じるというところだろうか。揚げ物を食べやすくしているだけなので、ある意味「禁断の味」だからだろう。割り切りは必要だ。でもまあ普通に食べるよりも胃もたれとかしにくいし、そんなに悪いことをしているはずはないんだけどな。