言葉のリハビリ場

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柿の葉寿司

柿関連でもう一つ。柿の葉寿司という食べ物がある。有名なのは奈良や和歌山で食べられているもので、鯖や鮭を柿の葉で包んで押し寿司にしてあるものだ。結構いろんなスーパーやデパート、駅ビルでも取り扱いがあるので、全国的にその姿を見ることもできるのではないかという人気ぶりだ。
私は押し寿司が好きなので、先日奈良と和歌山に行った際にも昼食と夜食に柿の葉寿司をいただいてきた。
定番である鯖の寿司と、あとはたまたま用意があったとかで椎茸の寿司を食べさせてもらった。椎茸は珍しいですね、とお店の人に話したら、このあたりじゃよく食べるよ、と笑って話していた。これは和歌山の九度山にある「柿の葉寿司九和楽」という店での話。普段は鯖しか作り置きはなく、それ以外は注文が入った時にだけ作るものだそうで、たまたま余っていたからと食べさせてくれた。余談だが、このあたりだと松茸よりも椎茸の方が高級品のように扱われていた時期があったようで、普通は松茸だけれど良いお家の柿の葉寿司は椎茸、なんてこともあったらしい。

有名な「柿の葉すし本舗たなか」はその九和楽のある九度山の東、ギリギリ奈良県に入ったところ(五條市)にあるお店で、メインの鯖のほかに鮭や鯛の入ったセットもかなりポピュラーだ。うっかり奈良で食べ忘れたけれど和歌山駅で売っていたのでついつい買って、これは夜食にいただいた。

製法もいろいろバリエーションがあるようで、柿の葉っぱの取り扱いからして種類がある。柿の葉を塩蔵したものを使うのかそうでないかの違いによって、寿司本体の塩気の効き方もまた少し変わってくるのだ。
古い時代は基本的には鯖のお寿司がポピュラーで、そこに松茸や椎茸、カマボコ、油揚げなど保存が効くものや加工品が主だったようだが、今は鮭や鱒、鯛なんかもあって内容もいろいろ変わっているのだという。個人的に一番好きなのが鯖で、次は鮭だったのだけれど、椎茸を食べてみてこれもまた変わっていて美味しいと思った。


ところで、柿の葉寿司は入れ物とか宣伝文句に「手が汚れなくて安心」とか「柿の葉をつかんで食べるから衛生的」というけれど、私の場合一度食べやすいように手でつかんで動かしてしまうので、どうしても手は汚れる。柿の葉で寿司を巻き付けるように包まれているタイプの場合、そのまま手で食べようとすると寿司が端っこに寄っていて食べにくくないか? とはよく思っているが、実際どうなんだろう。これは結構気になる問題だ。
柿の葉寿司には箸などは普通付いていない。ガリなどが別添えで入っていても、箸付きのものは見たことがない。わざわざそういった注意書きがあるものも見受けられる。柿の葉を上手に使って食べてくださいね、とか。

葉っぱごと食べるという猛者もいるようだけど、桜餅とは違ってさすがに柿の葉を食べるのはどうだろう。タンニンも含まれているし、そもそも美味しくないような……。

葉っぱも特に柔らかくないし、葉脈のところが結構固く主張して来るような気がする。タンニンは渋みを感じる成分であり、渋柿のあの渋さの原因でもある。柿の葉も塩蔵タイプのものだと、塩気があるから渋みも気にせず食べてしまうのか? 世の中には柏餅の葉っぱを食べる人もいるし、そのあたりは正直習慣とか文化だからよくわからない。ちなみに先述の有名な「柿の葉すし本舗たなか」では「柿の葉は取り除いてお召し上がりください」との回答が掲載されているので、公式的には非推奨ということだ。その代わり、柿の葉寿司を葉っぱごと少しあぶって食べるのは推奨している。香りが引きたって美味しくなるらしい。朴葉味噌と同じような原理だろう。


そんなわけでまあ少なくとも私は桜餅の葉っぱは食べるけどそれ以外は食べないタイプである。
食べないけれど、柿の葉のお茶なら飲んだことがある。ビタミンCが熱に強いタイプのものだからお茶にしてもちゃんと摂取できるとかなんとかで、健康に良いらしい。


そう言えば、奈良や和歌山だけでなく、石川や鳥取でも柿の葉寿司は食べられている。
ひと口に柿の葉寿司といえども少々違いがあって、石川のものは同じ押し寿司のようだが形が異なり、鳥取は握り寿司だそうな。私はどちらも食べたことはないのだけれど、今すぐにでも食べに行ってみたいような気持である。北陸といえば「ますのすし」が有名だし、私はあれも大好きなので柿の葉寿司だって美味しいに決まっている。
まだ知らない柿の葉寿司を探す旅に出てみたくなった。そう。また、食べるための旅をしようというのである。そういうものだ。今回だって奈良や和歌山に行って、柿の葉寿司だけじゃなくて天理ラーメンや和歌山ラーメンを食べたし、帰りに寄った大阪では串揚げを食べたりもした。浜松にも寄り道をした。餃子が食べたかったからだ。静岡にも寄り道をした。「さわやか」のハンバーグが食べたかったからだ。

私の旅は食事と共にある。柿の葉寿司も共に。