言葉のリハビリ場

特にテーマはなく、ざっくばらんに書いています

カレーパン


子供のころ一番好きだったパンと言えば、カレーパンだった。


焼いてあるものとかではなくて、あくまで揚げてあるタイプのものが好きだ。中身がある程度スカスカでもあんまり気にしない。カレーの味がほとんどしないほどスカスカであるとかじゃなければ、全然大丈夫だ。多少の空洞はあったほうがいいとさえ思っている。まあ目いっぱいカレーが詰め込まれたカレーパンというのはあんまり見たことがないけれど。
時間帯の問題で品ぞろえが少ない場合は例外だが、基本的にどんなパン屋でもカレーパンを扱っていないという店はあまり見たことがない。カレーの辛さが選べたり、チーズが入っていたりと複数バリエーション用意されている店も多い。カレーパンはたぶんパン屋の定番商品であるはずだ。

私は何を差し置いてもとりあえずカレーパン、というくらいには好きだった。人に買ってきてもらうのでも、自分で買ってくるのでもとにかく最優先はカレーパンだった。
さいころからそんな感じで、高校生の時などは(運動部でもないのに)とにかくお腹が空いていたということもあり、弁当を食べた後に購買(正確にはちょっと違うが似たような感じのもの)でカレーパンを買って追加で食べたりしてた。揚げ物だからということもあるけれど、口当たりが良くて別腹扱いしていた。さっき弁当も食べてなかったかとツッコミがあったような気はするが、覚えていないくらい良く食べていた。
社会人になるくらいまではずっと一番はカレーパンだった。

ところが最近はどうだろう。気が付けばカレーパンというものをもうしばらく口にしていない気がする。
パン屋に行っていないわけではないのだけれど、カレーパンを購入するシチュエーションというのはいつの間にか少なくなってしまった。

あんなに好きだったのに。

まあでもよく考えてみると、パンを食べるタイミングというのが変わっているということが一番影響している気がしている。私にとってカレーパンは基本的にお昼の食べ物なのだ。揚げ物なので朝は食べないし、夜にパンを単独で食べる機会というのは私にはほとんどない。全くないわけではないけれど、今も昔もあんまりそういう習慣がない。基本的にカレーパンは昼の食べ物である。
そして、昼にパンを食べる機会というのは確実に減っている。代わりに、朝食べる機会というのが増えている。
夜のうちに翌日用のパンを買ってきて、朝それを食べるというパターンだと、甘いやつかサンドイッチ系のパンが選ばれるので、当然ハードなカレーパンを選ぶことはない。いやまあ別に食べようと思えば食べれないこともないだろうけれど、朝のためにパンを買い置きしておくシチュエーションは間違いなく忙しい時なので、そんな時にカレーパンを食べようというところまで気が向かないというのはある。

でもまあなんだろう、食べる機会は減ったけれど、間違いなくカレーパンのことはまだ好きだ……と思う。最近食べてないな、食べたいな、までは良く思うのだ。思うのだけれど、その先が続かない。いつ食べるのか。いつ食べよう。
今まで別にそんないつ食べるのかなんて考えもせずに、そうだカレーパンでも食べるか、ともっと気軽に食べてきたはずなのに、いつの間にかカレーパンを食べるタイミングってのはいつなんだろうなとかそんなことを考えてしまっている。

これが、「大人になった」ということなのか……?


……たぶん違うと思う。

いつの間にか私にとってカレーパンという存在はドーナツと同じ枠に行ってしまったのだ。好きだけど食べるタイミングを選ぶ食べ物。

代わりにいつでも別に食べられるな……という枠に収まったのは、アップルパイである。アップルパイも昔から好きではあったけれど、こちらは逆に食べる機会のほうが全然なかったのだ。パン屋にはアップルパイとかそれに準ずるものが結構な確率で置かれているのだけれど、どういうわけか選ばれる機会が少なかった。好きだけど、まあ今日はいいかな、みたいな存在だった。
でも今は違う。ご飯のついてだけじゃなくて、おやつとしても買うようになった。デザート枠に入ることもある。うっかり朝に残っても、全然普通に食べられる。パイ生地だからカロリーとかはちゃんとあるんだろうけれど、罪悪感の薄さとかリンゴのジューシーさとかで全部その辺をなかったことに、気にしないようにしてくれるわけである。

そういうわけでカレーパンがいつの間にかアップルパイにとって代わっていたというわけである。

これが、「大人になった」ということなのか……?

 

 

たぶん、昔より甘いものが好きになったんだろうな。