言葉のリハビリ場

特にテーマはなく、ざっくばらんに書いています

歯を2本抜いてきた話


親知らずを2本、抜いてきた。
上の左右の奥歯のその奥に、親知らずがそれぞれ生えていた。割と綺麗にまっすぐ生えていたのでほとんど奥歯と同じような扱いになっていたのだけれど、奥過ぎて歯ブラシ等のケアが行き届いていないという問題もあった。まあそんなもんかなと歯医者に行ってクリーニングするたびに思っていたのだけれど、先日久々にレントゲンを取り直したときに「これはもう抜いてしまった方がいいかもしれないね」と言われてしまったのである。
軽度の虫歯になりつつあるのだけれど、奥過ぎて治療は難しいし、歯ブラシが届かないなら結局また同じことになる。なので、いっそのこともうこのタイミングで抜いてしまったらどうだろうかということであった。さらに面倒なことに、私の場合上の歯にはもう1本過剰歯が存在するのだという。親知らずの外側にもう1本歯が埋まっている状態で、レントゲンの結果それらは横向きに生えていることが分かった。親知らずのことをこれから圧迫する可能性があるという。
最悪だ。今は最悪の状況ではないものの、いずれ最悪になりかねないということである。

そういうわけで、仕方なく親知らずを抜きに行くことにした。
私は歯医者が苦手である。まあ得意というか好きな人はなかなかいないとは思う。家から遠くとも、比較的痛くせずかつ治療はちゃんとしてくれる歯医者を探して今通っている医院に通うことになった。いつも痛みが出ないように(できる範囲で)気を使ってくれるし、歯の状態も良くなってきているしだいぶ助かっている。
助かってはいるが、だとしても歯医者そのものは苦手である。おかげで抜歯前の1週間はだいぶストレスを感じながら過ごした。

抜歯は12時半から開始予定だったので、朝と昼の間のようなご飯を食べてから出かける。他の病院なら直前にご飯を食べても問題はないけれど、歯医者の場合ちゃんと歯磨きをきっちりしてから出かけないといけない都合上、直前に出先で適当に食事を摂るということができなくて面倒だ。しかもこの後歯を抜くということは最悪しばらくまともなご飯が食べられないかもしれない。食べることは楽しみであるわけで、それを封じられるとなるだけで気が重いわけである。
まあそんなことを思いながらも、ちゃんとした食事を用意する面倒さも相まって結局結構適当な食事をして、余った時間でおやつちょっとつまんだりし、何とも言えない複雑な気持ちのまま歯を磨き、やっとの思いで重い腰を上げて出かけることとなった。本当に気が重かった。

歯医者に到着してまず聞かれたのは、「今日はどちらの歯を抜くのか?」という事だった。右の奥か、左の奥か。私は答えた。「両方」と。これからどんなお身をするのか推し量りたくもないが、一度経験してしまったことをもう近いうちに経験しなくてはならないということのほうが嫌だと思ったからだ。
両方、と答えると先生は言った。「嫌なことはいっぺんに終わらせる、いいですね」と。ちょっと笑っていた。私が痛みに弱いことを十二分に知っているからこその、笑みだったと思う。たぶん。
まあでも、先生はこうも言っていた。「痛くはしません、痛くは」と。そしてその言葉は嘘ではなかった。麻酔の針を刺す時だけ少々痛みがあったが、そのあとはちゃんと麻酔が効いて感覚がなくなったことを確認してから抜歯を進めてくれた。
辛かったのは、その麻酔液が垂れてしまった時であった。滅茶苦茶に苦いのはそうなのだけれど、飲まないようにしてくださいね、ともうほとんどのどに近いところにまで侵入しかかったタイミングで言われたので、なんとか飲まないようにするのが本当に大変だった。別に飲み込んでしまったとしてそれほど何かあるわけではないが、麻酔液であるので少々感覚が麻痺してしまうと言われたらまあ頑張って飲まないようにするものだ。咳を一生懸命我慢しているときのように途中からえずきそうになってしまい、私は苦しくて泣いた。強めに泣いた。抜歯よりなにより苦しかった。
抜歯自体は割とあっさりと終った。歯を何か挟んでメキメキ言わせている音が口の中から聞こえると言うのはあまりに嫌な出来事であったけれど、それも少しで終わってよかった。そのまま感覚がちゃんと麻痺していたので、歯を抜かれた感覚すらなかった。感覚がなさ過ぎてこれからまだ歯を抜くんじゃないかと思って身構えたりしたが、「終わりましたよ」と言われて安心した。
親知らずのさらに外側の過剰歯が見えたようでこれも取っておくか一応聞かれたが、しばらく何事もなさそうなのでそれはやめてもらった。口では伝えられる状況ではなかったので、アイコンタクトでめちゃくちゃに訴えた。さすがに無理、と。

抜歯行為自体の痛みは全然なくて、ほっとした。もちろん麻酔が切れるにつれて痛みは出てきたが、耐えられないほどではないので良かった。痛みがあれば鎮痛剤を飲んでもいいとのことだったので、夕食後に飲んだりはした。聞いたかどうかは正直よくわからない。鈍い痛みはずっとあった。ちょっとだけあった頭痛が解消されたが、まあそうだよな、鎮痛剤だもの。

抜歯後はしばらく血が止まらなかった。事前に言われてはいたが、思っていたよりずっと止まらなかった。土曜日に抜いて、結局夜まで止まらなかった。日曜日に朝起きてようやく血が止まった。
そんな状況ではあったが、あまりにもお腹が空きすぎて夕飯は普通に食べてしまった。血の味がそんなに強くなかった(なぜだろう?)のもあって、出血は続いていたが普通に食欲のほうが勝ってしまい、食べた。
天丼を食べた。てんやのオールスター天丼を、Uberで頼んで食べた。さすがに外食する気力はなかったし、痛みがあれば休み休み食べないと……などと思ってそうしたけれど、案外普通に食べられた。痛みや出血があったのであまりちゃんと噛まずに食べるというちょっとどうなんだろうという感じではあったが、まあ大丈夫そうだ。

日曜、月曜と経過して抜いた箇所の痛みはまだある。歯を少し圧をかけて動かしているせいもあるのか、奥歯の周りもまだちょっと違和感というか痛みみたいなものがある。でもまあだいぶ良くなった方だ。食事中に気にはなるものの、もう明日くらいにはきっと気にならなくなるだろう。
抜いた奥の方にもたぶん咀嚼時に食べ物が行っている気はするが、たぶん大丈夫そうだ。さすがに指で触ったりする勇気はまだないが、出血もないのでそのまま放っておけばいいだろう。
とりあえず、虫歯になりつつあった歯を除去できてよかったと思う。ただまあ親知らずはまだ2本残っている。下の歯だ。両方とも横倒しの状態で存在するので、これらが何か悪さをするようになったら……本格的に切開を伴う手術になるのだろうか。考えるだけで嫌になる。考えたくない。いずれ、その時が来るのだろうけれど、しばらくは忘れて過ごしたいところだ。
上の奥歯の過剰歯についても同じくである。しばらく何事もないようにしたい。本当に。

だからちゃんと、歯磨き等ケアをがんばるので……。