言葉のリハビリ場

特にテーマはなく、ざっくばらんに書いています

フード自販機の思い出

ニチレイのフード自販機がいつの間にか生産終了済であることが話題だ。機械の方のメーカーがもう部品を提供できなくなってしまったことが原因の一つであるとかで、これから新規にフード自販機が増えることはないようなのである。残念な話ではあるけれど、どう考えてもコンビニやその他飲食店と競合しておりかなりの劣勢に立たされていることは間違いない。
フード自販機という言葉と大抵セットで現れるのは「真夜中の高速のSA」だけれど、あれはコンビニすら営業していないところにうまく生き残っているからこその存在なのだと思う。
上信越道の黒姫野尻湖PA(だったと思う)に真夜中到着して、小腹が空いて自動販売機コーナーの前に行き、確かフライドポテトを買って食べたのをなぜか強烈に覚えている。あの自販機特有の、過剰なほどに容器ごと温められたしなしなのフライドポテトを、車に何とか持ち帰って食べた記憶がある。めちゃくちゃに熱かったけれど、美味しかった。
夜中に温かいものが食べられるって、それだけでなんかもう美味しいんだ。新東名の静岡県区間に24時間営業(今は情勢的に夜中は営業していないが)の静岡おでんが食べられるドライバーズスポットがあるけれど、あれに通じるところはあると思う。

自動販売機で売られている食品、というのは、小さい頃はかなりの憧れの存在だった。そして「頼んでも買ってもらえないもの」の一つでもあった。
市の運営しているスポーツセンターにニチレイのフード自販機が置いてあって、それをほぼ毎週目にしていた時期があったのだ。相当前の話である。スポーツセンターで何か習い事でもしていたのだと思うけれど、そう考えると下手すれば20年くらい前の話だ。
その頃の習い事の後のご褒美と言えば冷たい飲み物であった。お菓子やアイス、それから軽食のようなものは(この後夕飯があるから)ダメだと言われていたけれど、唯一飲み物は問題とされなかった。だからいつも習い事の終わりに飲み物をねだっていたのを覚えている。毎回買ってもらえたかどうかは覚えていないが、頻繁にあの自販機コーナーのベンチに座って甘い飲み物を飲んだ記憶がある。
フード自販機は飲み物の自販機と同じように並んでいた。並んではいるけれど私にとっては不可侵領域というか、触ってはいけないものだった。フライドポテトや焼きおにぎり、それからたこ焼きなんかも並んでいたと思う。コンビニで買い食いをしたこともないような子供にとってそれらの品々は非常に魅力的に映ったものだ。
でも結局あのスポーツセンターの自販機コーナーでは、その後一度もフード自販機で何か買って食べた記憶がない。ダメだと言われていたこともあるけれど、そもそも習い事もそんなに長く続かなかったのだろう、あの場所に頻繁に通うこともなくなってしまったからというのは大きい要素だったと思う。家の近くでは他に同じような自販機があるところを知らなかった。
初めてちゃんとあの自販機のものを食べたのは、かなり大きくなってからの高速のSAとかPAだと思う。全然覚えていないからたぶん、特にすごい体験だったわけではないと思う。今普通に食べたって「感動するほどおいしい」「すごい美味しい」という感想は出てこないわけで、基本的には「そうそうこういうもんだよな」とうなずきながらも真夜中とかに食べるから妙においしいとか、そういう類のものなのである。
でもまあ多分、子供の時に食べていたとしてもそれはそれでちゃんと美味しく食べられたような気もするんだよな。たまたま巡り合わせが悪かっただけであって、なにかきっかけがあれば普通に小腹満たしとして美味しく食べていたかもしれないな。そういうものでもあると思う。

なんというかこう、フード自販機とはこれまで深くは付き合ってこなかったのだ。コンビニに毎日通うことはあっても、フード自販機に毎日通うことはない人生だったわけだ。そしてそれはこれからも達成されることはおそらくないわけで。そういう意味ではちょっと寂しさはある。
でもまあ、それこそ夜中に高速道路のSAとかでお目にかかればたぶん手を伸ばしてしまうことは今後もあるだろうし、そういう付き合い方は同じように続いていくんじゃないかな。頑張って買おうとか、積極的に買おうとかそういうことではない。そこで頑張ろうとするのは何か少し違うというか、不自然というか。強制されたり頑張ったりするのではなくて、これまでと同じように視界に入った時に食べたいと思ったら買う、そんな感じで、自然に付き合っていけたらいいと思う。