言葉のリハビリ場

特にテーマはなく、ざっくばらんに書いています

昔の思い出のパン屋が閉店していた

車の免許を取りに行ったときにお世話になっていたパン屋があった。
自動車学校の休憩スペースには、飲み物だけではなくてパンの自動販売機もあった。パンの自動販売機と言えばいわゆる「コモパン」というなぜか学校関係の施設にやたらと導入されているメーカーのものが主流だと思う。私の通っていた自動車学校にもコモパンの自販機が導入されていたのだけれど、一番下の一列分だけがコモパンではない別のパン屋のパンが並べられていた。
気になって買ってみたのだけれど、これがめちゃくちゃに美味かった。特にカレーパンが絶品だった。自販機に入れられているのである程度時間は経っているはずなのに、とても美味しいのである。
袋に書いてあった店の名前で検索すると、自動車学校のある最寄り駅の商店街にある小さいパン屋の商品であることが分かった。
後日、店舗の方に出向いて改めてカレーパンを買ってみたけれど、出来立ては持った美味しかった。小さなショーケースが1本だけのお店だけれど、所狭しとパンが並べられていてなんだかわからないが嬉しくなるようなお店だった。
カレーパンはやはり名物のようで、お店ではバリエーションもいろいろあった。いくつか買ったけれど、定番以外だとチーズカレーパンもめちゃくちゃに美味しかった。
それからは自動車学校を卒業してからも、その駅に用事のある時はたまに寄って買うようになった。知り合いにも紹介した覚えがある。カレーパンを買って一緒に食べたような気がするけれど、どうだっただろうか。違うパンだったかもしれないけれど、わざわざ寄って買って帰って一緒に食べたのは覚えている。あの人はそれを覚えているだろうか。

ただ最近はその駅に全然用事がなかったので、パン屋もだいぶご無沙汰していた。行っても前を通ってよするを見るくらいで、なかなか買うところまで至らなかったりもした。カレーパン揚げたての札を見て寄りかけたこともあったが、急いでるしまた今度でいいや、とスルーしたときもあった。
昔は定期券内だったので気軽に降りて向かうこともできたのだけれど、今は電車定期券自体を所持していないこともあり、そうするとなかなか途中下車をすることもなくなっていった。

そんな中、年明けくらいに久々にその駅に足を運んだ。駅から目的地に向かう途中でパン屋の前を通ったけれど、驚いたことに店の前に大行列ができていた。普段並んでいても2,3人くらいだったので珍しいなと思って覗き込んでみると、どうもよくよく様子を見てみると、食パンの販売をしているようだった。これまで販売していたかどうかは覚えていないのだけれど、何か新しい試みでも始めたのだと思う。
ようやく世の中にこのお店のことが知れ渡ってきたのだろうか、なんて考えながら、私は特に食パンには興味がなかったのでそのまま通り過ぎた。
こんなご時世だし余計にお店が賑わっていていいな、と思っていた。

でも、「こんなご時世」はお店に影響を及ぼしていたらしい。
先週末、パン屋の前を通ったら、シャッターが下りていた。休業日かな、と思って近づくと、シャッターがありているだけではなく、お店の看板すらなくなっていた。お店があった形跡ごと全部なくなっていて、張り紙等もなくただただ茶色い錆びたシャッターと、看板を掲げていた跡だけが残っていた。
慌ててお店の名前で検索すると、小さな地元メディアの記事が出てきた。「90年の歴史に幕」……閉店った。一昨年の春は「ステイホーム」の需要があったようだけれど、それ以降は厳しかったとの談話が乗っていた。店は通勤客が減り、法人向けの需要も落ち込んで厳しかった、とも書いてあった。私が自動車学校で食べたのも「法人向け」だったわけだが、そうだよな、通勤する人が減ればそういう需要も減るよな。

好きなお店は行けるときに行った方がいいんだな、という当たり前のことをまた改めて思った。