言葉のリハビリ場

特にテーマはなく、ざっくばらんに書いています

人はなぜエレベーターの緩衝材に落書きをするのか

マンションやビルなんかのエレベーターに緩衝材が貼り付けられているのを見たことがあるだろうか。半透明なプラスチックのギザギザなあれである。エレベーターに元々備わっているような布とかで作られている保護シートではなく、もっと雑な、引っ越しとかで傷をつけないようにするためのものだ。養生とかプラダン(プラスチックダンボール)とか言うらしい。

あれに落書きする奴、あまりに多くないか。
落書きと言っても言葉としては正確ではなくて、正しくは傷を付けて文字なんかを書きつけているようなものだけど、大抵下品な書き込みに溢れている。エレベータに乗っている時間はそうたいして長くはないと思うのだけれど、それでも日々着実に増えて行くから不思議である。

私は始め、あれはマンションだけで付けられるようなものかと思っていた。というのも、傷を付ける=固くて細いものが必要、と思っているから、例えばマンションであれば家の鍵なんかを手に持っているのは極めて自然なわけで、それをつかってちょちょいのちょいと匿名の落書きを残していくのだと思われる。
じゃあビルなんかではどういう原理なんだろう。わざわざ鍵を取り出して書いているのか? そのあたりはよくわからないけれど、確かに何かで書いてはいるのだ。
私の会社のオフィスの下の階には学習塾の自習室が入っている。たぶんそこの生徒が書きだしたのだろうとは思っているけれど、そういうのはきっかけにすぎなくて結局いろんな人が連鎖的になにか爪痕を残しているらしくもうカオスである。思っていたよりずっとあのエレベータのプラスチックダンボールの存在はメジャーで、かつ身近なものだということだろうか。誰かが先手を切って書きだすとあとはダムが決壊するように、やがて様々な落書きで溢れて行くわけである。それを余りに自然に、あの数十秒の中で行っているわけだ。それも、エレベーターでおそらく一人になったタイミングなんかで。
世の中、大スマホ時代になったけれど、エレベーターの中は電波が相変わらず通じにくい。金属の箱だからそもそも電波を通しにくい。だから、緊急用の電話が付いているわけだし、場所にもよるがスマホどころか携帯は基本的に県外になるようなエレベーターだってざらである。
手持無沙汰なのだろう。そこで生まれた数十秒の暇な時間が、人を落書きへと誘いのであろう。どうせ引っ越しやら何やらが終われば撤去されるのだから、と軽い気持ちで行われるわけであろう。

良いことではないし大抵下品な事が書いてあって愉快ではないのだけれど、何処からともなく必ず現れる落書きに1人ではない多くの人が爪痕を残していく姿は非常に興味深いとも言えよう。
ただまあこれは民度の表れというか、治安が良くないというか、決して褒められたものではない事は確実なんだし、ないならないで全然構わないのだけど、思っていたよりもずっと身近な存在だということに気がついてしまって驚いたというわけだ。以上。