言葉のリハビリ場

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紅生姜の天ぷらをそばに乗せる

紅生姜の天ぷらを温かいそばに乗せると美味い、ということに気がついたのは、ほんの偶然の出来事がきっかけだった。
関東在住の私はそもそも紅生姜の天ぷらという存在がメジャーではなく、何かのきっかけで目にした時に「美味しそうだな」と思っただけで、実際には食べたことがなかった。だからそれをそばにのせて食べるという発想も当然なかった。
ある時、北海道は室蘭に観光に出かけた時に、なんとなく朝ごはんにそばが食べたくなったので、室蘭駅の近くのそば屋(確か松のやと言う名前だった)にふらふらっと入って行った。普段の私なら迷うことなくコロッケそばを頼むのだが、ふと並んだ揚げ物の中に「紅生姜の天ぷら」があることに気がついたのである。紅生姜と玉ねぎのかき揚げ、というのが正しい見た目の赤いそいつに目を奪われた私は思わず「この、紅生姜の……」と口にしていた。
それでまたこれがそばとよく合うのである。
元来、そばと相性のいい「刺激物」は七味唐辛子をはじめとした唐辛子のものか、冷たいそばならばすりおろした生姜やわさびを使うこともあるだろうくらいで、それ以外の挑戦はしたことがなかった。
紅生姜の天ぷらは薬味でありながら具でもある。これは発見だった。紅生姜の塩辛さと酸っぱさ、生姜たる所以の刺激、そしてバラバラになったかき揚げがまるで揚げ玉のように出汁にコクを与える。これは良い。これは素晴らしい。
とまあそんな勢いで私は紅生姜の天ぷらをそばに乗せることにはまってしまったのである。
それからと言うものの、私は温かい蕎麦を食べようと言う時には必ず紅生姜の天ぷらを置いてある店を探してしまう。近頃はレギュラーメニューでは無いようだがあの「富士そば」チェーンにも置いてあるため、探すのはとても容易になったのは嬉しい誤算だ。
おかげで元々の好物であるコロッケ蕎麦を食べる機会が少なくなってしまったので、どうしようかと思案していたところ、これまた素晴らしい店を見つけてしまった。東急大井町線と都営浅草線中延駅近くにある「大和屋」という店である。ここはコロッケも紅生姜の天ぷらもどちらも最高に美味いし両方一度に乗せることも可能とあって、もう私の心はすっかりこの店に奪われてしまった。
我孫子駅弥生軒のような時折の例外はあるものの、私はしばらく紅生姜の天ぷらをそばに乗せて食べ続けることになるだろう。