言葉のリハビリ場

特にテーマはなく、ざっくばらんに書いています

「ラコンブリッコラ」


サイゼリヤというファミレスはワインのメニューがやたらとあって結構ちゃんと「飲める」店ということで有名だが、デザートのページにもワインの仲間のお酒が掲載されていたりして気になっていた。「グラッパ」というやつで、食後酒としてイタリアではそれなりにポピュラーな存在だそうだ。
とはいえ蒸留酒でアルコール度数がかなり高い(40度とか)ことや、そもそも「ブドウを絞った後の皮を発酵させたアルコールを蒸留して作る」という点もちょっとピンと来なくて、ずっとなんとなく認識はしつつも飲まずにいたら、2年位前にサイゼリヤのメニューから消えてしまった。

代わりに登場したのが「ラコンブリッコラ」という名前の甘口のワインである。最初はお試しで200円で提供されていたらしいのだけれど、今は300円になっている。そして一般的なワインよりも度数が高く14度もあるというのだけれど、以前のグラッパよりはずっと優しくかつ甘くて飲みやすいという話を聞いていて、今度こそはと気になっていた。

なので、先日サイゼリヤに行った時に、いい機会だということで挑戦してみることにした。
ちゃんとひとしきりいろいろ飲み食いした後の、最後のデザートである。それでも全部飲み切れるか自信がなかったので、3人で分けて飲むことにした。

一口飲んでみた感想としては「旅館の夕飯の最初に出てくる食前酒だ」という何ともシチュエーションとはかけ離れたものだった。美味しいし飲みやすいしこれなら大丈夫、というのはもちろんあるのだけれど、それよりもなによりも、旅館で出てくるアレだというそんな感想のほうが先に出てきてしまった。
いやだって、本当になんというか、似ていると思ってしまったのだ。知らないもののはずなのに、味わった感じが急に知っている味に感じられてしまって、思わずなんか割らんてしまった。

旅館で出てくるものはたぶん梅酒や杏酒とか、あるいは山桃とか山ぶどうみたいな温泉地っぽいものだろう。ラコンブリッコラはおそらくレーズンとかその辺の系統(まあワインなんだからぶどうなのはそうだと思う)でちょっと似ているようなそうでもないようなという微妙なかすり方をしているわけだけれど、どうにも私は一口飲んでもうすっかり気分は旅館になってしまったわけである。
ちょっとしたつまみが3種類くらいのった横長のお皿と、小さなグラスの食前酒……のあの雰囲気である。おおよそサイゼリヤのイメージとはかけ離れているけれど、これはこれで結構好きだ。でもイメージは完全に温泉になってしまった。

こういうなんか「明らかに別のシチュエーションなんだけれども、頭の中でつながってしまう」という体験は面白いものだ。常に頭の中で過去の経験とか記憶とかを無意識に検索しに行っているのだろうな。知らない料理なのになんとなく懐かしいとか知っているような気がするとかそういうのは、過去の似たものを思い出して当てはめているのかもしれない。
だから逆に全く思い当たるもののない知らない味というのは「口に合わない」という感じで最初は受け付けなかったりするのだけれど、何度か食べているうちに慣れてきてだんだん好きになっていったりすることはあると思う。ブルーチーズの類とかは完全にそれで、最初は味も香りも全く意味が分からなかったのだけれど、だんだん慣れてきて今では普通に食べるし、ワインでもあればむしろ好んで注文すると思う。外国の人からすれば納豆とかはこのカテゴリに入ることになるんだろうか。
知っているものに当てはめて上手く自分の中の引き出しを開けられると、急に理解が深まって美味しく感じたりする……とかって、みんな同じようにあるものだろうか?