言葉のリハビリ場

特にテーマはなく、ざっくばらんに書いています

羊羹

小さい頃に聞いた羊羹の話がある。羊羹を一本買ったら戸棚にしまっておいて、それを大事に薄く薄く切りながら食べ進めていく。来客があればお茶請けとして羊羹を出すけれど、相手によって暑さを変えて出す。重要な来客なら太めに、そうでないなら薄めに。
そんな感じで薄くしたりと気に太くしたりしながら切り進めて行って、最後、羊羹から砂糖が浮いてくるくらいまでになったら、渋いお茶と一緒にお茶請けとして自分で食べる。確かそんな話。
昔聞いた話なのでところどころ違っているような気はするけれど、だいたいの流れはあっていると思う。自力で立つか立たないかくらいの羊羹を切り分けて人に出す、なんて、特に目の前で見せてもらった光景でもないのに、なぜか頭の中ではイメージできるんだよね。まあきっと昔は、いや今でもわりとある話なんだろう。一人からではなくて、昔は祖母からとか含めていろんな人からこんな感じの羊羹の話、聞いた覚えがあるしね。
でもまあ、実際に羊羹を切り分ける時(なんてほとんどないけれど)、厚いとか薄いとか考えずに、そもそも切り方からしてさいの目に切って爪楊枝で刺して食べるとか、そういうパターンばかりである。少なくとも我が家は割と昔からさいの目だった。立方体に近い感じに切り分けて、気軽につまむもの、そういうイメージである。贈り物散った肩ひじ張ったものではなくて、もっと普段使いというか、おやつというか、そんな感じで食べていたな。
もっとも、今時結構一口サイズの羊羹が売られているし、世の中的にも気軽に羊羹を食べる機会は多いのだろう。非常時の栄養補給にも良いらしく、非常食のセットの中にも入ってるのを見る。
贈答的な素敵な羊羹と、普段使いの羊羹。結構いろんな幅があるもんだね。

しかしまあ、たまたま今調べただけなんだけれど、「とらやの羊羹」と調べるとサジェストに「謝罪」が付いてくるのは面白いね。確かに和菓子って、客先に持っていくようなイメージがあるな。手土産持参というか菓子折り持参のシチュエーションって謝罪の時のイメージが確かに強いし、謝罪の時ほど和菓子な気はする。派手じゃないからなんだろうか。誠意がこもってそうな感じなのかな。

羊羹ではないけれど、何年か前にいたオフィスの近くには有名などら焼きのお店があって、何回かそれを買いに行ったりしたっけな。数量限定だから開店時間に合わせて行くんだよね。会社のカード持って行って、箱入りの詰め合わせを買う。それで包装までしてもらって一丁上がりと。その時は月に1回くらい買いに行く用事があった気がするので、普通に商談とか挨拶とかの時の定番として使ってたんだろうな。
そういえば、お使いのついでにこっそり自分用にどら焼きを追加で買ってる先輩がいた。今更ながら、真似して買ってみればよかったな、なんて思ったりもする。あれ、おいしそうだったな。出来立てのどら焼きの匂いがする店の中で、領収書を待っている時間は結構好きだった。もう店舗移転しちゃったみたいでどこにあるのか知らないけれど、堂々と自分用に買いに行ってみたいもんだ。
羊羹だってきっとそうだ。別に人に渡す用でなくとも、買えばいいのだ。自分向けに。一口サイズの小さな羊羹を買って、誰かにあげるついでに自分が食べるんでもいいかな。

ああ、そういえば羊羹はあまり食べていない気がしてたが、「水羊羹」は割と食べている気がする。美味しいよね、水羊羹。よく考えたら羊羹だもんな、あれも。和風の冷たいデザートとしては一番好きかもしれない。じゃあ水羊羹だ。水羊羹を買って雇用。そうしよう。