言葉のリハビリ場

特にテーマはなく、ざっくばらんに書いています

ファックス文化

ファックスって今時使います? という話なんだけれど、恐ろしいことに社会人になってから良く使うようになった。会社でやたらとファックスを使うのである。いやいや正気かよと思ったけれども結構いろんな会社でそういうことがあるらしい。一度広まった常識や習慣というものはそう簡単に変えられないのか、あるいは「初期投資は簡単だけど新しく仕組みから作り変えるのは大変だよね」ということなのか。わからないけれどとにかくファックス文化というのは往々にして社会の中に存在している。

そりゃまあ私が小学生くらいの頃は携帯電話は全然普及していなかったので、ファックスとかはそれなりに使った事はある。個人宅に固定電話があって、ファックス付きのものを使っている家庭も多かったと思う。
そんな思い出から早十数年。平成も終わろうという今日この頃にファックス文化というのは一切滅びようともせずに、残っているところには主力として今なお使われている現状がある。家庭では固定電話もかなり減ってきているのに、だ。

ファックス文化は印鑑文化と深く結び付いている。契約なんかが関わってくる場合、紙に印鑑を押して渡す必要がある。それが遠距離の場合郵送かなんかでやり取りをするととにかくタイムロスが発生するから、ファックスで送ることで代用していたりするわけだ。
それでも印鑑を押した原本が必要になることもしばしばあるので結局意味がないような気もするけれど、合意を得られたとか契約が成立したとかと「みなし」てさっさと仕事を進めたい場合なんかはこれでいいんだろう。
客先常駐の仕事での請求書作成なんかの時に良く使われるパターンがこれだ。

そもそもなぜデータで送りつけるのがダメなのか。pdfかなんかでメールにのっけて送りつければ事足りそうだし、何ならwordだろうとExcelだろうと簡単にデータ共有できる時代である。何も極秘事項で社外持ち出し禁止の書類を受け渡ししようだなんて思っちゃいないのだ。そんな極秘事項ならますますファックスなんて使っていられない。
つまり本当に必要なのは印鑑の押印であるという見方もできる。書類やそこに書かれていることの保障として印鑑を押印した、その事実こそが確認したいものなのである。じゃあ印鑑を押した書類をスキャンしてpdf化でもなんでもして送ればいいのに、と思うが、データでは複製が簡単にできるからダメなんだそうだ。

とある会社の例だが、その会社は総務部が違う建物に入っていたので、何かと書類を総務部に送りつける際にファックスを利用していた。契約云々の書類もそうだし、経費申請なんかもそう。下手すると退職にともなう誓約書すらファックスで送っている。
書類はPC上でデータを作成して紙に印刷し、そこに押印して送る。押印と言ったって名前と日付の入ったスタンプみたいなものだ。会社が利用している勤怠システム上でも各種書類の提出をしているのに紙でも二重で出すという、形骸化したファックス送信を重用するちょっと何言ってるのかわからないタイプの会社である。

驚くことにこれは特殊な1社のみで行われているような事例ではない。下手をするとそれなりに良くある事例であるから嫌になる。


自社に向けて外出先からファックスを送る。これは百歩譲って理解できる。契約書とか勤務表とか、自社ではなく他社に出向いて仕事をしている場合には帰社する以外に書類を直接やり取りする方法を考えないといけない。ただ会社で使っているPCというのは大抵USB等の外部からのデータのやり取りは禁止していたりするので、スキャンして取り込んで……とかも制度上NGだったりする。セキュリティー上仕方のない事が多い。

そういう時に郵送ではなくファックスokであれば多少楽だし、受け取った総務なり上司なりが確認するのも楽である。

印鑑を押した書類をファックスして印鑑を押してもらってファックスで戻してもらう。受信したファックスはコピー機に勝手に吐き出される仕様なので、いちいち内線で報告して速やかにピックアップしてもらう。こんな愚かなシステムを採用している会社よりはだいぶマシである。


ところで電話番号とファックス番号というのが併記されている場合がある。一緒の場合と違う場合があるわけだ。死ぬほど面倒くさい仕組みである。制度がつくられた時は画期的だったのかもしれないが、意識していないと本当に忘れる。それを調べる手間も面倒くさい。相手の名刺なりメール末尾の署名欄なりを探してきて見ないといけなくなる。さすがに連絡先としてファックス番号まで登録している自信はない。相手が個人ではなく会社や店の場合はなおさらだ。

いつも同じところにしか送らないなら別に何でもないしそのうち覚える(例えば自分の会社に書類を送るとかそういう)けれど、じゃああんたは200箇所ある量販店の支店全部のファックス番号と電話番号が違うかどうかを調べて違ったらどう違うのかを聞いて送ってとか一々やりたいのかと。電話番号が一緒だったら一緒だったらで電話中はファックス送受信ができないしファックス送受信中は電話ができない。なにこれ。10枚くらいうっかり送ったら10分くらい電話が使えないわけで。紙一枚ぺらっと送りつけるだけで意味分からない労力と時間を使ったうえ正式な書類は印鑑付きの原本が必要だなんて言われた日には発狂したくもなろう。

じゃあなんでファックスで一回送らせたんだよ、とは店も自分も思うだろうし、ファックスで書類を要求した方が結局確認目的とか監査対策とかにしか使わないなら本当に要らないと思う。本当に無理して自分と相手の時間を使って紙のやり取りをファックスなんかでやるべきじゃない。


ファックスが滅びてくれは言わない。滅びてしまえとは思う。思うけれどもう本当に業務上仕方なく使うこともある。だから使わなきゃならないものだけに使わせてほしい。意味のわからないやり取りや形骸化していて目的のわからないことに使いたくないよね、紙の無駄だし。