言葉のリハビリ場

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コロッケそばの話

コロッケそばの食べ方のこだわりを語る記事を読んだ。コロッケそばとはその名の通り、そばの上にコロッケを乗せた食べ物のことである。主に立ち食いそばの店でよく見かけるもので、昔からあったのだろうとは思うけれど、目につくようになったのは割と新しい食べ物だと思う。
食べ方のこだわりの記事だったので皆様々な食べ方をしていたけれど、私は最後までコロッケを放っておく派である。コロッケに手を付けずに、最後に食べるのだ。途中までは出汁扱いというか、油分として扱っているというか。油のコクの染み出たそばを食べてから、出汁をよく吸ったコロッケを食べるのである。結構工夫している店が多くて、放っておいても全然形が勝手に崩れたりしないので案外食べやすい。食べ始めると崩れ出すけれど、もうそばを食べ終わった後なのですくいやすくて楽だ。

昔、コロッケをそばに乗せるというのは邪道の扱いだった。実際私もそう思っていた。そばに合わせる揚げ物と言えばまず天ぷらの類だろう、と。あるゲーム内で「倒れた食堂のおばさんの代わりに注文をさばく」というミニゲームをしたことがあるけれど、その時のセリフの中にもコロッケそばについてのコメントがある。邪道だし認知されてないけれど最近地味に人気があるんだ的なセリフだったと思うけれど、あれは12,3年くらい前だろうか、ともかくそれくらい前にはまだそこまで一般的な組み合わせではなかったようだ。
現在は関東を中心に食べられていることが多いようだ。発祥の地は銀座の店であると言われているけれど、どうも大阪にもそういった店があるようなのだ。関西で生まれて関東で広まるという、ちょっと不思議な食べ物なのかもしれない。塩味の尖った関西風より、醤油味の強い関東風の方が相性がいいのかもしれない、というのはある。

昔は私もコロッケそばを食べなかったし、食べようとも思わなかった。そもそもそばがそんなに好きではなかった、というのもあるけれど、そばには天ぷらなんだろうなという固定観念があった。温かいそばというよりも、冷たいそばのいわゆる天ざるとかの方が好きだったかもしれない。そうするとまあ、コロッケははなから選択肢に入ってこない。あとは、わりとそば屋で丼ものとのセットを食べることが多かったから、そばは素の状態であることが多かった。かつ丼とか、天丼とか、そういうものにおまけでついてくるミニそばにはトッピングがないのだ。
そういうわけで私とコロッケそばとの出会いはずいぶんと時間がかかったのである。

初めてコロッケそばを食べたのはいつのことだっただろうか。実ははっきりとは覚えていない。たぶん、紅ショウガの天ぷらを乗せたそばに出会った頃……だったと思うのだが、ちょっと自信がない。紅ショウガの天ぷらとそばの組み合わせに目覚めたことによってそばをよく食べる様になった私が、トッピングとしてコロッケに手を出すようになったというのがたぶん正しい経緯だったと思う。
中延の「大和屋」という立ち食いそばの店が一番好きな店で、この店のコロッケと紅ショウガ天が絶品ということ聞きつけていくようになってから、完全にハマった。
関東で紅ショウガ天を出す店はなかなかレアで、富士そばでたまに季節のレギュラーと化している以外では特定の店以外ではなかなか見ない代物である。そうすると、採用率の高いコロッケをよく食べる様になるのである。駅そばなんかだと今やコロッケはない方が珍しいくらいだから、そういう意味ではありがたい。

しかしまあ、このところは家にいてばかりなので全然コロッケそばを食べていない。コロッケそばは基本的に出先の食べ物だし、それこそ駅とかでさっさと何か食べたい時のご飯だから、なかなか今のご時世的に食べる機会がないのだ。
書いていたら食べたくなってきたな。あの出汁がしみ込んだ衣を崩れないようにうまく食べる、いいよね。いいんだ。