言葉のリハビリ場

特にテーマはなく、ざっくばらんに書いています

ラーメンと胡椒

ラーメン屋のテーブルの上にほぼ確実に置いてあると言っていいものといえば、胡椒である。S&Bの「テーブルコショー」かGABANの「ブラックペッパー」のイメージが強いが、たまに胡椒ミルの形で置いてあって、自分で挽いて使うタイプのものもある。
S&Bの「テーブルコショー」かGABANの「ブラックペッパー」に関しては、ほとんど使ったことがないと思う。というのも特に入れるタイミングがないというか、選択肢に入ってこないというか、なんとなく、使ったことがなかった。
ミルで挽くタイプは逆に何で使ったことがあるんだろう、なんて思ったけれど、これ、とんこつ醤油とかそういう味の濃いラーメン屋でよく見かけるようなイメージがあって、そういう濃い食べ物に何か味の変化を付けようと思ったときに胡椒を入れてみようかな、という気分になるんだと思う。
だからそういう意味では、例えばあっさり風味の醤油ラーメンとか、そういうところに何か味を足して食べようという、そういう発想にならないというのはあるのかもしれない。視界にはちゃんと入っているのだ。だって、あの青と銀の丸い缶のパッケージのイメージはラーメン屋にすごく強い。たいてい蓋とかそういうのはないんだよな。フードコートのラーメン屋とかだと、受け取りのカウンターの所に大抵置いてあるし。もっと古い、個人で細々やってるところだとそれが瓶に入ったテーブルコショーになったりして、まああるよな、あるけどな、という感じでそのままスルーしてきたところはある。
とんこつラーメンの場合は味の濃さから途中で味を変えたくなったりするのだけれど、醤油ラーメンはあんまり味変のイメージがないというのは大きい。味噌ラーメンでもそうだろう。
味を途中で変えるというのはちょっとギャンブルみたいなところがあって、それこそ胡椒を振る行為というのは基本的に味を足したらもとには戻せないわけで、そういうわけでもちょっとためらってしまうところはあると思う。途中から何か入れて食べたくなるというか、変化を付けて食べるのがおいしいなと思うのはとんこつの濃厚なラーメンの特徴かもしれない。
そういう意味では博多とかでとんこつラーメンを食べるときはついつい紅ショウガとかを途中で入れてみたりするし、何なら高菜を入れてみたりしたりもする。替え玉を頼むときは特にそう。そうすると、味にパンチが効いてよりたくさん食べれてしまったりするわけである。

ここまで書いていて思ったけれど、私は基本的に味を足す行為を食べている途中からしたいのかもしれない。最初から突っ込むのは「すでに味を知っている」時くらいだと思う。いやそれでもなかなかやらないだろう。
それでまあ、胡椒というのはたまにとんこつ醤油系のラーメンとか、あとは二郎インスパイア系とかで苦しくなってきたときとかに使ったりするのだろう。たまたまだけれどそういう店は大抵ミル挽きタイプの胡椒が置いてあるので、まあなんというかあの黒コショウの粒がたくさん入った瓶というのも何かそそられるものがあるのかもしれない。普通の胡椒類は既に景色になってしまっているようなところはある。

ただ最近結構胡椒を使うタイミングというのは増えていて、それはラーメンというよりは餃子を食べる時だったりする。「酢と胡椒で食べると美味いよ」と聞いて試してみたのがきっかけで、結局私は醤油も入れてしまうのだけれど、胡椒を入れて食べるのは結構おいしいということに気づいたのである。

胡椒へのハードルが下がったところで、この間はとうとう醤油ラーメンへ胡椒を入れてみるにも至った。
ドーミーインというビジネスホテルでは、夜になると夜鳴きそばという名前でハーフサイズの醤油ラーメンが提供される。無料サービスなので、私は必ず宿泊するたびに夜鳴きそばを食べている。あっさりとした醤油ラーメンだけれども、この間泊まった時に「良ければ胡椒をお使いください」と声を掛けられてふと、たまにはそういうのもいいかなと胡椒を使ってみた。GABANの「ブラックペッパー」であった。それが結構おいしくて、そうか胡椒を入れるってのはこういうことなんだな、と改めて思ったのである。ちょっとジャンクになる感覚、嫌いじゃない。
ドーミーインの夜鳴きそばは全国どこでもほぼ同じ味(たまに違う味がすることがあるが、気のせいかもしれないのでそれは定かではない)なこともあって、安心して試すことができたけれど、これからドーミーインに泊まるときは入れてみようかな、と思うくらいは美味しかった。

たまにふとしたきっかけで試してみると思わぬ発見があるけれど、胡椒もまたそうなんだな。