言葉のリハビリ場

特にテーマはなく、ざっくばらんに書いています

秘湯


秘湯。


それはアクセスが困難で、主になかなか簡単にはたどり着けない場所にある温泉のことをいう。多くの場合それは険しい山の中にあり、車が1台通れるくらいの道の先にあったりするものだ。いや、車で行ける場所はまだ甘いかもしれない。試しにwikiで「秘湯」と入れてみたらば「日本の主な秘湯」のところに"いずれも登山装備を要する" なんて書いてある。何のことはない。本当に秘められた温泉なのである。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A7%98%E6%B9%AF

 

さてまあハードルを上げに上げまくったわけだが、私は少なくともwikiに載っているような秘湯には行ったことがない。理由は明白である。旅行は好きだが登山は特に好きというか得意としていないからである。今までしたことのある登山的なものだと、軽井沢側から登る旧碓氷峠見晴らし台へのコースくらいだ。軽井沢でもうすでに標高960m、登山口まで自転車で行ってしまえば1000mを超えたあたりからスタートするわけで、頂上までは200mくらい。反対側の群馬県側は標高460mであることを考えればまあぬるいものである。

私が行くようなところは、今のところ車がすれ違えはしないけれども1台普通に通れそうな道の先にあることが多い。国道から外れて5kmくらい山を登っていくとか、そういった感じだ(あるいは国道自体がもうそういった細い道であったりもする)。楽ではないけれど、行けなくもない。そんな具合がちょうどいいので、何かと理由をつけて出かけていくわけだ。

この間行ったところは、これまた広めの県道から離れて細い道を登ること3kmくらいのところにある温泉宿だった。対向車が来てヒヤヒヤしたときもあったがまあ特にバックして対比するようなこともなく、広めのところで少し止まって待っていればいいくらいの道だった。
特筆すべきは宿にあった温泉である。宿の中にケーブルカーがあって、浴衣にスリッパというようないでたちで乗ることができる。中に入ってボタンを押すとゴトゴトと山を登って行って、2分くらいですぐに頂上へ。ついたところが露天風呂付きの温泉である、という作りになっている。これはさすがに驚いた。変わり種だけれど面白い温泉だった。こういう突飛な出会いがあるから温泉に行くのはやめられないのである。

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菱野温泉 常盤館の中にあるケーブルカー


これからの季節は運転技術の関係でなかなか行けないのだけれど、できれば雪の降りしきる中で秘湯と呼ばれるようなところに行ってみたいものである。人に運転してもらって、というシチュエーションで行ったことはあるけれども、なかなか素晴らしいものだった。露天風呂と雪の相性はとてもよい。
雪が降る村の景色はとても静かで美しいものである。ほかに何も音がしない。温泉のお湯の流れる音がよく聞こえてくる。外にいると寒くてスマホもなかなか出すのをためらわれるほどでも、露天風呂とくればまた別である。お湯につかりながら、寒いはずの景色の中に自分がいる、それは何とも言い難い素晴らしいものである。
ゆっくりお湯につかって、何か考え事でもしながら過ごしたいものだ。誰かと一緒ならしみじみ話すのもいい。雪の中の秘湯はしばしばほかの利用客のいない貸し切り状態になる。来るのもなかなかに困難だし、寒いのであまり利用者もいないのだろうか。もう2年前になるだろうか、日本一人口密度の低い豪雪地帯の村、檜枝岐へ行った時がまさにそうだった。宿に温泉がなかったので近くの日帰り温泉に出向いたのだけれど、本当に誰もいなくてとてもよかった。去年の夏に行った奥阿仁の温泉もぜひ冬に行きたいところである。あそこも豪雪地帯で、しかも日帰り温泉施設をメインでやっているところだったので、宿泊客は少ない(客室がそもそも少ない)のに浴室が巨大で、それを独り占めできてとても良いところだった。冬、雪の降る時にぜひ行きたい。運転できる気がしないけれど。

温泉。秘湯。秘境。
休みを見つけて遠くへ出かけよう。

 

 

※檜枝岐に行った時の事を思い出して書いたやつ

fwbc0416.hatenablog.com