言葉のリハビリ場

特にテーマはなく、ざっくばらんに書いています

台風の夜、避難勧告の通知で起こされた夜

台風が来た。

激しい雨と風と共にやってきた。いつもより大きな勢力の台風で、そいつは電車を全部止めてしまった。その時のことは先日書いた通りだ。19時とか20時とかで運転を打ち切る旨のアナウンスを聞きながらあわてて西の方から帰宅したのが台風がやってきた日のだいたいの出来事である。
家に帰ってから雨はとんでもない激しさになった。風も強かった。何か物が飛ばされてきたら、窓くらい普通に壊れてしまいそうな雨風の強さだった。こんな強さでは電車は当然止まるだろう。止めたほうがいい。乗る人も運行する人もみんな危険だ。

翌日は月曜日だったので出勤日である。翌朝の電車はすでに8時までは運休が決まっていた。一部電車は10時という発表をしているところもあった。上司もそれを見て、事前に出勤時間を12時に設定してくれた。こんな日の朝は通勤なんて無理だ。
よくわからない理由で先週金曜に繰り上がった納期のおかげで、月曜の仕事自体には多少の余裕があったのも幸いした(金曜が納期に繰り上がるという話は木曜日に聞いたので、それはそれで生きた心地がしなかったが)。不幸中の幸いというか、結果オーライというか。当初の予定なら今週は切羽詰まった納期週、もうどうにもならない追い込み時期のはずだったのだ。台風のせいではないにしろ、納期が前にずれたことに0.0000001ミリくらい感謝してもいいと思った。……それ以外の感情はここには到底書けない。

とにかく翌日はいつも出掛ける時間よりも、ずっと遅くていい。それならゆっくり寝られるな、と少しだけ嬉しく思いながら就寝した。でもまあどうせ電車も遅れているし、入場規制をやったりして辛い通勤にはなるんだろうな、とも同時に思っていた。


過去の事例を思い出す。台風が来ると電車が遅延するどころか運休になるけれど、それもいつか動きだす。計画運休ともなれば、逆に一斉に運休が解除されるわけであるわけで、運休解除とともに通勤客が殺到するのは想像に難くない。新幹線の始発ならば6時になった瞬間に東京と品川と新横浜から一斉に電車が発車するわけだけれど、計画運休の解除の瞬間に全力で運転を始めるわけではないのだから、本数の少ない電車に通勤時間何時間か分の人数が一斉に押しかけたらそりゃあパンクするわけだ。
そもそも毎朝地獄のような満員電車である。身体が触れ合うとかいうレベルではない。まあまあ混んでいる電車で体が触れるのが嫌なのかしきりに振り払ってくるような輩がいるけれど、そういう人は体が密着して身動きが取れず、スマホすら見る空間のないところに押し込められたらどんな動きをするのだろう。まあ動けないだろうけれど。
多少雨が降ったりでもすればお手軽な地獄が完成する通勤電車であるけれど、台風が来たらどうなるか。電車が地獄なのはもとより、そもそも駅にすら入れないとかいう事態になる。電車に乗るまでが地獄。乗っても地獄。動いたり動かなかったりする電車にいつ乗れるかもいつ降りられるかもわからず詰め込まれる苦痛。想像するだけで行く気がなくなる。だからせめてゆっくり寝て、少し早めに出ていろいろあきらめながら出勤しよう。幸い12時半過ぎとかでいいから適当に来てくれというお達しも出ていたし、甘えることにした(その分残業したので結果的にはトントンだったけれど)。

旅行帰りだったのもあってあっさりと、そしてぐっすりと眠った。
夜中、うすぼんやりとした意識の中で、外の雨音が耳に入ってきた。雨は聞いたことのないような音を立てて叩きつけている。風だろうか、窓が時折揺れている。疲れているから寝られるけれど、普通の日なら気になって寝られないかもしれない。そういえば寝る前に見たニュースでは「寝ていられないようなほどの大雨」なんて言っていたっけ。「接近とともに世界が変わる」なんて言い回しをしたのは気象庁だったか。
ここ数年ゲリラ豪雨みたいな雨には何度も、それこそ最近もなぜか北海道で遭ったりしたけれど、その雨より強いものが何時間も降り続けているような異常事態はなかなか経験にない。明日の朝大変なことになっていないといいけれど、さすがに心配だった。

一抹の不安を抱えながらそうやって寝ていたので、朝方急にスマホが大音量でけたたましい音を鳴らした時には本当に驚いた。
エリアメールが来たのである。

この間一度ゲリラ豪雨の時に鳴って以来の緊急警報だった。設定とか何にもしていなくても勝手に鳴るようである。前は電車に乗っているときだったのでわりと冷静に見ることができたけれど、今回ばかりは4時45分とかいうぐっすり眠っている明け方で、しかも外は暴風雨というこんな状況に、聞きなれない音が最大音量で一斉に鳴り出すものだからもうそれが普通に怖かった。私用のスマホと社用のスマホが同時に鳴り響く恐怖。それも1回じゃなくて結局3回鳴った。1,2回目はほとんど立て続けにやってきた。そんでもって5分ぐらい開けてもう一報やってきた。前触れがなにもないから本当にビビる。寝ている場合では完全になくなってしまった。

内容は隣の自治体宛の避難勧告だった。隣の自治体は丘の上にある。確かに土砂災害が怖い場所だ。でも、隣の町へ警報が来たということは、自宅のある町にもまた別で避難勧告の緊急警報が来るんじゃないかとも思った。だって家から普通に見える、2,3分しか離れていないような場所である。避難勧告が出たらいよいよ他人事ではないし、また寝ているうちに同じ大音量のエリアメール受信音で叩き起こされるのが嫌で、しばらく起きている羽目になった。
寝ているときに目覚まし以外で不意に起こされると本当に心臓に悪い。緊急地震速報が夜中に鳴った時も怖かったし、何なら夢にも出てくるレベルだった。

こういうのは実際緊急事態なので鳴らないとそれはそれで困るのだ。憎むべきは自然災害のほうである。

結局それからあまり寝られもせず、かといってはっきり起きもせず、だらだらと過ごして快晴の朝を迎えた。駅も電車も馬鹿みたいに混んでいて、2倍くらいの時間をかけて仕事に出かけたわけだけれど、何とかして通勤しようとする(というかさせようとする)ことのほうが、憎むべきことなんだろうね。

 

そんな寝不足が尾を引いている残暑の夜。