言葉のリハビリ場

特にテーマはなく、ざっくばらんに書いています

不思議な色の月を見た


新千歳空港で出発の飛行機を待っている時、ふと窓の外が目に入った。暮れかけている群青色の空に、丸くて大きな月が浮かんでいるのが見える。そうか、今日は満月だったかな、と思いながらしばらくそれを眺めているうちに、私は空港の中に展望デッキがあることに思い当たった。幸い夏とはいえ北海道の夜は涼しい。外に出て多少風に当たっても良いだろうと思い、私は外へ出た。

展望デッキには多くの人が既に景色を眺めていた。流石に暗くなっているからか、カメラを構えた人は少なかった。駐機場の明かり、滑走路のライト、飛び立つ飛行機、そして遠く地平線から少し上のところに浮かんでいる月を眺めていた。私はずっと月を眺めていた。

丸くて、そしていつもより大きく感じた。大きくて、何だか少し赤みがかっている気がした。夕陽と、月と、ちょうど間くらいの色だろうか。やや赤くそして神秘的な色をしていた。

今日はそういう、特別な月が見られる日だったか? そう思い私は手元のスマートフォンで調べる。けれども何も出てこない。満月であるという情報だってままならない。特になにもない、普通の日、たぶん満月であろう普通の日であると言う事だけしかわからなかった。

そうこうしているうちに、これから夜に向かって空を昇っていくであろう月に、異変が起きた。
満月だったはずなのに、上の方からだんだんと欠けてきたのである。最初は見間違いかと思った。けれども、どんどん欠けて来て半月になってしまったあたりで確信した。
何か起きている。

となればあれだろうか、月食という奴だろうか。私は興奮してまたスマートフォンで調べ始める。でも、何も出てこない。その間にもどんどん月は欠けて行って、もう三日月みたいになっているのに、月食の文字はどこにも出てこない。月食は先月末にあったばかり。じゃあ今日は? これはなんだ? 
どこを探しても答えが出てこない。

そうして月は欠けて行って、最後うっすら線のようにになってそのまま消えていってしまった。
あんなに大きくて丸かった月はどこにもいなくなってしまった。

飛行機に乗る時刻は21時。タラップを上がりながら空を見上げると、そこには何事もなかったかのように丸くて白い月がそこにあった。満月だ。これが本当の、普通の満月だ。

じゃあ、さっき見たものはなんだ? あの赤くて、大きくて、そして上から欠けて消えていってしまったものは?

飛行機が羽田空港に着陸した時、曇り空の中で月は見えなくなってしまっていた。
私は夢を見ていたのだろうか?