言葉のリハビリ場

特にテーマはなく、ざっくばらんに書いています

1つのテーマで複数の物語を想像する

招待客の誰もいない結婚式、というワードをどこかで目にした。多分それは式場のキャンペーンの一環で、リハーサルをやっている新婚夫婦の映像から勝手に連想したものだったかもしれない。
私はそういうワードを思いついた時、それがどんなシチュエーションか考えて膨らますのが好きだ。

 

2人以外誰もいない結婚式。それは例えば、逃避行のお話。2人の結婚は、誰にも認められていなくて、ついに駆け落ちしてしまった2人がたどり着いた先に結婚式場があった。

2人きりでの結婚式。2人は幸せだったのだろうか? もしかしたら、これから2人で歩んでいく未来に向けた決意のための結婚式かも知れないし、あるいはもうどこにも逃げられない諦めから、せめてもの思い出としての結婚式かも知れない。

悲恋の末、たどり着いた地での擬似的な挙式。途中で貰ってきた婚姻届は、自分たちの名前は書いて、でも役所に出すことはできずにそっと式場においてその場を立ち去る。決して結ばれることはできない悲しみを、結婚式という形で昇華して、納得して、そこで終わるのだ。全てが。
連れ戻されるのか、命を捨ててしまうのか、逃げ続けるのか。
2人がどんなけじめをつけるために挙式したのか、それは私にはわからない。

 

あるいはどうだろう、もっと退廃的な世界観で考えてみてもいいだろう。

 

異常気象で、人の住めなくなった大地に生き残ったたった2人の人間。
まだ生き残っている人がいるのではないかと、険しい気象条件の中で荒れ果てた荒野を彷徨ううちに古い教会を見つける。
風化してしまったかつての街並み。教会だけが、形を保っている。それは同時に誰1人としてここに生きて残ってはいないという絶望。

 

2人きりで、結婚式をしよう。いつ世界が滅びてしまうかはわからない。ならば最後にここで永遠の愛を誓う、それはどうだろうか? それはきっと、希望になるだろうか?

 

 

1つのテーマで複数の話を考えて、それを1つの物語としてまとめる。重松清の『カーネーション』の話くらい作り込めば、様々な感情の交差する複雑な味わい深い物語となることだろうが、あいにく私はそこまでの緻密さは持ち合わせてないので、どうか、許して欲しい。

いつかきっと短編のような形で披露出来ることを夢見て、一度ここに「しまって」おこう。

 

招待客のいない、2人きりの結婚式。
あなたは何を想像し、何を創造しますか?