言葉のリハビリ場

特にテーマはなく、ざっくばらんに書いています

金木犀

金木犀の香りのする季節になった。
香りが漂って来るような花は、あまりない気がする。もちろん気づいてないだけかもしれない。
例えば、桃や梅の花はとてもいい香りがすることを知ってはいるが、それは花に鼻を近づけた時のことで、漂って来る、まではいかないような気がする。あくまで個人的な感想だが、金木犀は花の存在よりも先に香りがして存在に気がつくことが多々あるのだ。

金木犀の香りは夏の終わりと共にやって来る。夏物の半袖の服を仕舞い、長雨の季節がやって来る頃に、あの香りをまとった橙色の花を咲かせるのだ。

具体的にいつ咲いているのか、それを毎年はっきりと認識はしていない。むしろ、金木犀の花の香りで季節を感じるような、時の流れを感じる指標として認識している節はある。

金木犀の香りに気がついて、振り向く。緑の葉の中に橙色の花を見つける。あわただしく過ぎ去った夏を思い出し、やって来た秋を感じる。忙しさにかまけて気づかなかった季節の訪れを金木犀が教えてくれる。入道雲と紅葉の間、残暑と初秋の間、心にぽっかりと空いた穴のようなものを埋めてくれる、それが金木犀。

もうすぐ秋が深まり、冬がやって来る。
散りばめられた橙色が今年もそれを教えてくれた。