言葉のリハビリ場

特にテーマはなく、ざっくばらんに書いています

金木犀再び

甘い香りに振り向けば、そこには金木犀。姿がなくとも香りでわかってしまう花、それが金木犀である。この香りが漂ってくると、今年ももうこんな季節かと思わされる、風物詩のようなものである。
今年初めて金木犀の香りに出会ったわけだが、まだ花は咲ききってはいなくても強い香りを放っていて驚いた。あのオレンジ色の花を緑の葉の中に探したが見つからず、代わりに未だ咲かぬつぼみだけが見つかった。それでいて香りは既に漂っている。なかなかすごいものである。

金木犀という花は実に慎ましやかだ。その多くが緑の葉に隠れている。葉の付け根、その枝から花を咲かせるわけだから面白い。オレンジ色の花を咲かせるまでは本当にちゃんと探そうと思わなければ視界に入ってこないくらい隠れているものも多く存在する。だからいつも、目ではなく鼻がその花の存在を教えてくれるわけである。

ところで金木犀にはよく似た仲間が存在する。銀木犀と柊木犀というものだ。金木犀とかなり似ているが、銀木犀や柊木犀の花はオレンジ色ではなく白色である。また葉には鋭い棘があって素手で触ることは憚られるほど痛い。共通するのはその香りで、あの独特の甘い芳香はこの3種類に共通する特徴である。
ただ、一番香りが強いのは金木犀であるようだ。もともと金木犀は銀木犀からの変種であるそうで、銀木犀よりも花の数が多く香りも強いとされている。だから銀木犀は金木犀に比べてさらに慎ましやかであると言える。そのうえ棘のある葉をまといなかなか触れることも出来ない。しかし青々とした葉の間に除く白い花は美しくそして芳しい、この事実は揺るがない。実に面白い存在である。金木犀花言葉は「謙虚」。そして「気高い人」とも。銀木犀は「初恋」そして「高潔」。なんだかわかるような気がしてしまう。

柊木犀というのは銀木犀と酷似しているがちゃんとした別の種類のものだ。銀木犀と柊の交雑種と言われており、銀木犀よりもよりはっきりとした棘が特長だ。ほとんど銀木犀と同じようなものだが、開花する時期がより遅い。金木犀が一番早くて9月後半頃、その後が銀木犀でさらに後を追うように柊木星が花を咲かせる。11月頃になるとようやく柊が花を咲かせるというのであるから、交雑種であると考えれば、ちょうど真ん中というのは至極まっとうな理論である。

目立たないけれども、慎ましやかにその存在を主張する可憐な花。これから季節が進んでいくにつれて、少しずつ種をまたがって香りを楽しませてくれることであろう。秋になり、冬はもうすぐやってくる。
木犀の仲間たちのこれからが実に楽しみだ。


金木犀真闇もつとも匂ひけり 牧長幸子