言葉のリハビリ場

特にテーマはなく、ざっくばらんに書いています

夢の中では終わっていたのに

 

これは別に統計を取ったり調査をしたわけではないので体感でしかないが、私はどうもかなり夢を見やすいほうの人間であるらしい。友達と会話をしていて夢で見たことの話をすると、お前は見過ぎだとかよく覚えていられるなというようなコメントを頂戴することが多いのだけれど、そういうもんなんだろうか。
私が一番良く夢を見ているなと意識しているのは朝方である。起きたときに覚えているからということでもあるだろうけれど、基本的には眠りが浅い時に見るものらしく、私は朝方の眠りがかなり浅いんだろう。
朝でなくても、昼寝をしている時なんかは結構夢を見る。明らかに眠りが浅い状態という事なんだろうけれど、昼寝時に見る夢というのは起きたときに結構ちゃんと覚えているもので面白い。まあ覚えてはいるけれども、夢というものは時系列や設定が荒唐無稽で整合性のつかないものが多い上に、夢の中ではそれを全部なんとなく納得して動いている。そんなわけだから、起きたときに覚えてはいても言語化して説明するとなると途端に難易度が高くなるのがまた難しい。
私がアイドルグループの一員として放り込まれ一緒に活動できる喜びといやこれ本当に私でいいんだろうかファンならこんなのが出てきたらまず叩かないか? と悩む夢は言葉にしてまとめるとこんな感じにしかならないけれど、実際はもっと壮大で素敵なドキュメンタリーだったのだ。しかもその夢、確かもう1回続きのようなものを見た記憶もある。結構はっきり覚えていて面白い夢だなと思うのに、言葉にしてしまえばそんなもんである。
そうやって言語化しにくい変な夢が多いわけだが、急にめちゃくちゃ現実的な夢を見ることもある。
この間も朝起きて終わっている洗濯物を干してそれから朝食の準備を……という夢を見た。夢だった。正確に言えば洗濯が終わる音までは現実だったのだけれど、その音の後は全部夢だった。
なんて悲しい出来事なんだろう。

最近洗濯は夜のうちに予約をしておいて朝起きるタイミングで終わるようにしておくことが多い。今日も結構タイミングとしては完璧のはずで、目覚ましの少し後に洗濯の完了アラートが鳴った。じゃあと思って起き上がろうとしたところまでは意識があったのだけれど、そこからあんまり覚えがなくて気が付いたら二度寝をしていたわけだ。
ハンガーとかをもって洗濯機の前に行っていろいろ作業をしていた気になっていたが、それらはすべて夢の中の出来事であった。

こういう時は再度目覚めたときのダメージというかショックが大きい。
私は洗濯機の前に立ちながら「さっきやったはずなんだけどな」とぼやきながら洗濯物を取り出すわけである。あーあ夢じゃなきゃよかったのにな、と何度思ったことだろうか。一度終わったはずのことをもう一度やり直すのは本当に気が進まない。いやまあ別に実際にはそもそも起きてすらいないのだけれど、気持ちの上では一度完結した出来事を再度巻き戻されているような感じになってしまってだいぶ嫌だった。

作業をしていたファイルが保存されていなくて消えてしまった、とか、ゲームのセーブデータが壊れてしまいやり直しになってしまった、とかそういう時の真っ白になる感じ、あれを朝起きたときから味わいたくはない。徒労感と共に目が覚めるって一日の始まりとしてはきわめて最悪だし、そもそも若干寝過ごしていてスケジュールがキツいしなんなんだ、と。

どうせ見るならばいい夢を見たいとは思っているが、こういう起きた後の用事をこなしている夢というのは果たして「いい夢」なんだろうか。起きてから「夢で良かった」となるような苦しい夢や辛い夢というのは悪夢に分類してよさそうだけれど、精神的に(違う形ではあるが)ダメージを受けているのはもはや悪夢なのかもしれない。まあ朝起きて動悸がするような夢よりはよっぽど平和でいいけれど。
まあ「現実ならよかった」くらいの夢がちょうどいいのかもしれない。洗濯物の回収とかそういう夢はちょっとがっかりするけれど、普通にいい夢を見ることもあるし、それでがっかりせずいい「いい夢を見たな」といい気分になることだってある。いい気分になる夢だけを見ていたいけれど、そうは問屋が卸してくれないようだ。

「夢の酒」という落語があるが、あれもまあいい夢のいいところで起こされて結局ちょっとがっかりするという話(本筋を捨ててかいつまめばだが)なわけで、昔も今も夢には振り回されるのがオチなのだろう。