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「旅程を他人に押し付けろ! ~行程シャッフルフェスティバル~」顛末編


「旅程を他人に押し付けろ! ~行程シャッフルフェスティバル~」とは

 

fwbc0416.hatenablog.com

 

まあそんなわけで、不思議な遊びを実施してきたわけである。

開催地は岡山だった。程よく都会で、かつ東西南北各方面にいろいろな種類の路線(主に鉄道)が伸びているということで選ばれたのだけれど、結果的にはこれが大正解だった。旅程の組み方の自由度がちょうどいい感じに高かったのである。遠くに行くにしてもある程度の近場でも、いろいろ見どころがあるので参加した4人がほとんど行程に被りを発生させず、うまい具合にバラけることができて良かったと思う。
別に被ってしまっても良いしそれはそれである程度までなら面白いと思うけれど、すり合わせせずにちゃんと4人がそれぞれ別の方向性の計画を立ててきた、そのことだけでもう既に大成功と言っていいはずである。


実施前日、岡山のホテルに参加4名で集合した。2部屋分予約していたので、片方の部屋で行程シャッフルの儀式が行われることになった、手法としては、下記の方式を採った。

①1~4までの数字の書かれた札を取り、各自が自分の引いた番号を覚える
②別室に行き、自分の引いた番号を行程の入った封筒に記入し、ベッドの下に見えないように隠す
③全員隠し終わったら、再度数字の書かれた札を引き直す

③の時に自分の番号を引いてしまったら再抽選、と決まっていたが、1発で被りなく分配することができた。

ベッドに隠したそれぞれの封筒。規格がばらばらでもこの手法なら問題無し


ちなみに私の行程は4番で、引いた行程は2番であった。2番は一番大きな封筒だったので何が入っているのかとちょっとドキドキしたが、行程詳細の書かれた紙が、ファイルと共に封入されているだけだったので、ちょっと安心した。

行程表と解説、それから現金と切符入りの封筒

 

中に入っていたのは行程詳細の紙と、それから2種類の封筒だった。片方は電車の切符、もう片方は現金だった。切符は2枚だけで、現金は4310円も入っていた。想像していたよりも現金比率が大幅に高い。現金が入っている可能性というのは想定していたが、4310円というのはなかなかの額である。そして切符が少ないということは、つまり鉄道以外の移動がたくさん含まれているということである。

行程表を読んでみると、すぐに理由が分かった。私に振り分けられた行程は、バスと船を多用する行程であった。
バスに6回、船に2回乗るという、そういった計画であった。

切符は2枚だけ

これはかなり面白いぞ、と思った。私であればこういった計画はほとんどすることがないからだ。まあ大前提として車酔いしやすいとか船酔いしやすいとかそういったことはあるけど、そうであっても多少ならば予定として組み込むことはある。中部国際空港まで電車で行ってそのまま飛行機に乗らずに船で津に渡ったとか、そういうくらいのことはあるからだ。でも、ここまでのバス・船舶の多用というのは考えたこともなかった。
1日に5回もバスに乗るのは、観光地での乗り放題パスか何かを消化する以外の用途では正直初めてだと思う。
自分では考えなさそうな計画に当たったという意味では、この企画としてはかなり目論見通りといえよう。


前日時点ではこの時点ではまだどの行程が誰のものかを開示しないという取り決めがあったので、各々に振り分けられた行程表を確認しながら自分以外の誰かである作成者に向かって文句を言ったり感想を述べたりしながら、その日は少々早めにベッドに入って明日に備えた。
もっとも、私は朝8時24分岡山発とそれなりに余裕がある時間だったのであまり早起きではなかったが、他のメンバーは皆7時までにはホテルを出るような感じだったので、早く寝る必要があったのだ。
まあ私は結局いろいろあって2時くらいまで寝付けなかったのだけれど、それはまた別の話。

 

<出発>

いよいよ当日。「旅程を他人に押し付けろ! ~行程シャッフルフェスティバル~」実行日である。
朝6時過ぎに同部屋の人が出ていくのをなんとなく見送ったあと、私は7時まで2度寝した。寝不足だったのでちょうどよかった。それでも少し早めにホテルを出て、岡山駅には8時前には到着していた。



行程表には岡山駅で昼食の確保をしておいたほうが良いとのコメントが掛かれていたのでそれに従い、弁当を調達する。外で食べることになるだろうから、とあまり箸を使わずに食べられそうなおにぎり弁当を探して購入した。最近、全国的に企画商品としておにぎりタイプの駅弁がたくさん売られているので、それを探した。

それでもまだ時間があったので、指示にはなかったが駅で朝食を摂った。

椅子のあるタイプの店

改札内うどん屋である。
肉うどんというやつは西日本でしか見ないが、ほんのり甘辛で結構好きだ。

10秒くらいで提供された肉うどん

うどんを食べて、乗車する電車をホームで待った。


<岡山駅 8:24発 快速マリンライナー児島駅 8:47着>

クロスシートなので快適

マリンライナーの自由席に乗車。

児島より先、瀬戸大橋を通過するならば先頭車両のグリーン車に乗車するのがいいけれど、手前までだったのでそのまま指示通り自由席車両に座った。岡山始発なので普通に座ることができた。通路側でも特段問題ない。
20分そこらで瀬戸大橋の手前の町、児島に着いた。

大島でも児嶋でもない、児島


何度か通ったことはあるが、降りたことのない駅である。時間的に30分くらい余裕があったのでトイレを済ませたのちに駅前をちょっとうろうろしてみたりした。

 

ジーンズの町ということで駅前にひたすらジーンズが吊り下げてある通路があったり、行き当たった公園に謎のオブジェがあったりした。まあでも公園には謎のオブジェは付き物である。




散策して戻ってきたらバスが待機していたので、乗り場に向かった。

折り返し準備中のバス。消毒作業などをしていた


<児島駅 9:20発 琴参バス瀬戸大橋線 ⇒与島PA 9:50着>

乗り込んだのは路線バスであるが、瀬戸大橋を渡る路線なので、シートベルトが付いている座席だった。

全座席にシートベルト付き

瀬戸大橋は高速道路なのだ。でも、車両の見た目も中身も基本的には路線バスなので、なんだかちょっと不思議な感じがした。逆パターン(路線バスに高速バス用のいい車両が来る)のは見たことがあるけれど、路線バスにシートベルトを着けて高速道路対応にしているのは初めて見た。つり革があるけれど、高速道路区間は立ち乗りしてもいいんだろうか? ダメな気がする。
児島の街中を走ったあと、バスは高速道路に入っていった。

児島IC入り口

高速道路に入ってからの時速はおそらく60kmも出ていないくらいだったと思う。信号がないだけで、乗っている感じは普通の国道みたいだった。ただし、右車線をものすごいスピードで車が走っていくけれど。

 

路線バスなので、途中でいろいろバス停等に立ち寄るのだけれど、高速道路上のバス停だけでなく、途中にある島にも立ち寄って客扱いをしているのがこの路線である。瀬戸大橋が通っている櫃石島・岩黒島・与島の3島にはそれぞれインターチェンジが設けられているが、基本的には島の住人と路線バスにしか通行が許可されていないという、ちょっと特殊な形の造りになっている。岩黒島は大型車通行禁止なので今回の便では寄らなかったが、他の2箇所ではICを通るたびに通行証を挿入していて、結構な時間を使った。
目的地の与島に行くまでには櫃石島があるので、まずここで一般車通行禁止ICの様子を見ることができた。

レアな表示

入り口のゲートは、一般レーンの料金所のそれにほど近いのだけれど、実際には有料の駐車場の出入り口精算機のそれである。2重のゲートになっているので、ICを通るたびに2度一時停止をしてゲート通過の手続きをしていた。

櫃石島は一旦素通りして、次のICがある与島のPAで私は降車した。

 

ここは高速道路のPAであるので、一般車でもPAまでなら入ることが出来る。瀬戸大橋の途中にある唯一のPAということで、大賑わいだった。


<与島 散策>

PAは大盛況だったが、特に展望台がにぎわっていた。2か所展望台が存在するが、どちらもかなりのにぎわいだった。列をなすほどというまではいかなかったが、入り口の階段などはスムーズに乗降できないくらいにはなっていた。

展望台は瀬戸大橋がきれいに見えるロケーション

一通りPA内を散策して、まだ10時10分くらいだったのだけれど、どういうわけかやたらとお腹が空いてしまった。軽食を探してみたが、ピンとくるものがないし、どこも行列していた。
なので、かなり早いがこのPAにいるうちに岡山で買った弁当を食べてしまうことにした。

ピークの過ぎた藤棚の下がガラガラだったので、そこに腰を下ろして食事にした。

 



シンプルだけれど、美味しいお弁当だった。天気もいいし、気温もちょうどよく、外でお弁当を食べるのにはもってこいだった。PAであればゴミ箱もあるし、そういう意味でもちょうどよかった。

この後の行程表上の指示としては、与島の中にある別のバス停「浦城」に向かう事だった。11時56分発のバスに乗るようにとの記載があるから、それまでは自由時間ということになる。
個別ミッションとして「与島の中(PAの外を推奨)から瀬戸大橋の写真を撮る」というものがあったので、まとめて済ませてしまうことにした。
ミッションというのは、行程の中に組み込まれた別の指示である。指示された場所で指示の通り写真を撮るというようなことが主なのだけれど、支持の仕方も計画者に依存するスタイルとなっているので、このあたりも個性が出るところだと思う。
私の受け取った行程表では、大まかな指定はされているものの、後はいくつかシチュエーションを推奨するにとどめて旅行者の裁量に任せた形になっていた。

そういうわけで、1時間半くらいの暇ができた私は、とりあえず徒歩でPAを脱出することにした。与島の集落にバス停「浦城」があるので、ひとまずそこを目指してから周囲を散策することにした。
PAからの徒歩出口が見つからずにインフォメーションで聞いてしまったが、教えてもらった通りに進むと出口は簡単に見つかった。

小規模だがちゃんと出口

見つかったが、なかなかの通路だった。まさに通用口、という感じ。

道も途中までこんな感じで細々と続いていた

集落に入ってもこんな感じ

茂みの中を抜けると集落の路地にそのまま繋がっていて、順路通りに進むと海に出た。

瀬戸大橋を仰ぎ見るのにはちょうどいい感じのシチュエーションだったので、ここでご飯を食べてもよかったかもしれないな、と思った。

PAと反対側にあたる

 

ロケーションが気に入ったので、数分、堤防に腰かけて写真を撮ったりした後、集落のほうに足を伸ばした。

思っていたよりもずっとこじんまりとした集落で、幅50m、長さ200mくらいの長方形に収まりそうな感じの規模間の集落だった。飲食店等はないらしい。


灯台があったのでそこまで登ってみたり、集落の端の駐在所のあたりまで散歩してみたりして時間を潰したが、なかなかにのどかな風景と、見上げると現れる大きな瀬戸大橋とのギャップがなかなか面白い場所だった。
ちょうどアートの展示のようなものもやっていて、古いバス停に宇宙服が座らせてあったりして、新旧入り混じる不思議でシュールな空間を演出していた。

「月への旅の途中 最終駅」

余った時間は堤防で海を見ながら過ごしていたが、魚もそうだけれど刺されると痛いアカクラゲなんかもちょこちょこ混ざっていて、泳いだりするのには向かなそうなところだな、なんてことをぼんやり考えていたりした。まあもっとも、砂浜があまり広くない上に集落のはずれにあるので、もともと適していないのだろうな、とは思う。実際、釣り人はそれなりに見かけたが、マリンスポーツ系の人は全く見なかった。


そういうこともあってか、与島PAではたくさんいた観光客も、与島の集落にはほとんでいない様子だった。

鍋島灯台へ続く道

のどかで綺麗なところなので、PAに足を運んだついでにちょっと足を運んでみるとまた面白いので、お勧めしたい。
のんびりとした時間を過ごすことができた。


<浦城(与島集落のバス停)11:56発 琴参バス瀬戸大橋線 ⇒ 櫃石 12:15着>

そんなわけで宇宙服のいるバス停から再度バスに乗車する。

児島駅行きのバス方向的には先ほどまで来た方向に戻るような形になる。瀬戸大橋を渡り切らずに、北上するのだ。スルーした櫃石島に行くためである。日に5本ずつしかない路線バスを活用する乗車方法というわけである。

グネグネとした狭いつづら折りをバスは一生懸命のぼり、再度与島PAにたどり着いたバスはさらに瀬戸大橋へと戻っていく。島の中もICもぐるぐると曲がりっぱなしなので、手元を見ていたりするとすぐに酔ってしまいそうだった。私はできるだけ遠くを見たりしていたが、ゲート通過の様子なんかは面白くて、そこだけ動画を撮ったりした。

児島駅 - 鷲羽山 -(ここから瀬戸大橋)- 櫃石島 - 岩黒島 - 与島 -(瀬戸大橋おわり)- 坂出駅 という感じの路線になっているのだが、櫃石島や与島はICを降りて島の奥までしっかりと入り込んでくるような形になっている。幅の広いバスではなかなか厳しそうな道が連続するのだけれど、対向車もめったに来ない環境なのでそれなりの勢いで上り下りしていくのが面白い。当然島の中や高速道路に信号など存在しないので、各島のバス停では長めに停車して時間調整を行っていた。
そうして、先ほど一度通過だけした櫃石島へ降り立った。

バス停というか広場というか


<櫃石島 散策>

 

櫃石島は与島よりもさらに規模の小さな島である。この島も一般の車は通行できず、住民の車か路線バスでしか足を運ぶ方法がない。大きく目立つ施設はなく、小さな漁港が2つ(新港と旧港)と、ちょっとした神社があるような、本当にのどかな島である。


行程表上は特に細かい指示もなくのんびり過ごしてほしいとのことだったので、本当にのんびりと散策しながら過ごした。

干してある海藻

家でも干してあった

島の集落は与島よりも一回り小さい規模である。ちょっと歩いて回ると、主要な部分は簡単に見て回ることができた。多少の高低差のある部分や、島の反対側の名所などは行かなかったが、散策するにはちょうどいい感じだった。
途中、小中学校と幼稚園が一体となった施設があった。バスの中から見た感じだとそれなりに立派な施設に見えていた。だが、よくよく見てみると案内があり、2018年で全て廃校になった後だった。今は公民館として使われているらしい。後から調べた感じだと、住んでいる人たちが少なくなっているだけでなく、瀬戸大橋経由で本土に移動しやすくなったことも理由のようだ。
若い人は少なくなっているのかと思ったが、こういうシーズンだからか、帰省中の親子連れのような人たちは何組か見た。堤防でバーベキューをしていたり、庭で何か遊んでいたりしたけれど、だいたい小さな子供たちがはしゃぎまわっていて、楽しそうだった。帰省ってこういう感じだよな、としみじみ思ったりした。
与島で歩き回りすぎていて足がだいぶ疲れていたので、散策をした後は堤防に腰かけてぼんやりと海を見ながら過ごした。日向は暑かったけれど、日陰に入ると風が冷たくて気持ちが良かった。

 

 




1時間の自由時間をそんな感じでのんびり使った後、最初に乗ったのと同じ坂出行きのバスに乗り込み、次の目的地へと向かった。


<櫃石 13:14発 琴参バス瀬戸大橋線坂出駅 14:05着>

バスは先ほど櫃石に着いたときのバスが児島駅で折り返してきたものだった。運転手さんの名前が一緒だったので気が付いた。たぶん、向こうも私のことを認識していたようで、櫃石のバス停に入ってきたときに、片手を上げて合図をしてくれた。


日に5本ずつくらいしかない路線バスなので、運行している人員やバスも多くないのだろう。

坂出駅行きのバスということで、瀬戸大橋を再度南下するルートをとる。そのため、櫃石島を出た後は岩黒島バス停を経由し、再度与島に入っていく。グルグル回ってICを降り、つづら折りを下って与島の浦城バス停に行き、再度折り返してまたグルグル回って瀬戸大橋へ戻っていく。
歩き回った疲れもあって、私はそのあたりで車酔いを起こしかけた。戻したりしなかったが、歩いた疲れも相まって結局瀬戸大橋を降りてから坂出駅の間あたりを気絶したように寝て過ごした。


<坂出駅 14:16発 快速サンポート南風リレー号 ⇒ 高松駅 14:33着>

 

坂出からは電車で高松に向かう。坂出駅に到着した電車は混んでいたので座れないかもと身構えたが、半分以上の乗客が降車し車内はかなり空いた。私は4人掛けのボックス席に座ったが、高松まで誰も乗ってこなかった。

ガラガラ



バスで疲れていた私は駅のホームで買った炭酸飲料を飲みながら高松まで向かった。ちょっと元気が出た。
停車駅も少なかったので、割とすぐに高松駅に着いた。

顔があって可愛い


<高松駅 高速艇乗船準備等>

高松駅では40分弱の時間があったが、やるべきことが2つあった。
1つは、行程表に書かれた指令の遂行である。香川県は「うどん県」ということでうどんのPRを積極的に行っているが、最近ポケモンの「ヤドン」と名前が響きが似ていることからか「ヤドン県」というコラボレーション活動も行われている。その様子を写真に収めるというミッションが記載されていたので、ヤドンを探すべく高松駅構内を探した。
しかしながら、タイミングが悪く(?)香川県では「瀬戸内トリエンナーレ」というアート展示や、アンパンマンとのコラボが行われている最中で、ヤドン関連の物を探すのはちょっと手間取った。結局、土産物店に並んでいたヤドンを見つけて写真に収めたが、初めから割り切って駅から少し歩いたところにあるヤドン模様のマンホールの写真でも探しに行けばよかったな、と思った。簡単に見つかると思ったので適当に駅で探したけれど、誤算だった。途中で割と焦った。

グッズはたくさん売っていた


焦ったのにはもう一つ理由がある。それは、もう1つのやるべきことと関連していた。

この後の行程は「高速船で小豆島に行く」ということになっていたのだが、乗船用のチケットを購入しに行かなくてはならないとの指示があった。また、乗船についても自由席の先着順であり、余裕をもって船着き場へ足を運ぶ必要があった。GWということもあってか、駅にも港へ行く場合は余裕を持っていくようにアナウンスがあったりしたので、私は少し焦ったわけである。
ヤドンを見つけた後一生懸命歩いて船のチケット売り場に向かい、チケットを入手して即船着き場に向かった。駅からチケット売り場までは5分強とやや離れており、そこを速足で歩いたので汗をかいたが、結果的に無事高速船に乗ることができて安心した。それなりに乗船する人の数は多かったが、満席というほどではなく、運よく窓際の席も確保して事なきを得た。

慌てて確保したチケット

乗船した高速船。当然デッキには出られない


<高松港 15:10発 小豆島フェリー オリーブマリン(高速船) ⇒ 土庄港(小豆島)15:45>

 

高速船の座席に落ち着くや否や、私は目を閉じた。


私は車酔いについては幼いころに比べてしなくなった方だが、船酔いというのは激しくする方である。デッキに出られるタイプの船であればあまり問題はないのだけれど、高速船のように船内客室しか存在しない船というのは実は非常に苦手な乗り物だ。苦手だが、対処法も一応持っているので、個人的な旅行でもたまに利用したりすることはある、そんな存在だ。
対処というのは実に簡単なことだ。乗船したら一切目を開かない、これだけである。外の様子を見ると揺れを認識してあっという間に気持ちが悪くなってしまうので、見ないようにするのが一番である。できれば寝てしまうのが一番良い。
私は腕を組んで目を閉じ、そのままの姿勢で35分の船旅を終えた。目を閉じていると揺れの感じが飛行機と似ているので、まあ大丈夫だろうなと思いながらも一切目を開けず、到着のアナウンスがあって初めて目を開けた。
なので、目を開けたらいきなり小豆島が目の前にあったような格好になった。



<小豆島 散策>

小豆島は瀬戸内海に浮かぶ比較的大きな島である。島の中の交通手段としてバスがそれなりの頻度で運行されているので、土庄港からはバスを利用して移動することになっていた。行程表上も「歩けないことはないが」と注意書きがあったが、運賃もちゃんと用意されていたのでありがたくバスに乗ることにした。
バスに乗るまでに少し時間があったので港の土産物屋で名産のオリーブオイルを買ったりした。小腹が空いていたので軽食を取ろうと思ったが、そこまでの時間はなかったのでおとなしくバスを待った。
バスはICカードが使えたので支払いが楽だった。

5分くらいで土庄の中心街に到着する。ここには、世界一狭い海峡である「土渕海峡」が存在するので、写真に収めてくるというのが行程表上の指示だった。

世界一狭い海峡・土渕海峡

この場所はぱっと見では完全に河川のそれなのだけれど、実は海なのである。手前が小豆島で、向こう側は前島という別の島なのだ。幅10mにも満たない狭い海峡ということで1996年にギネス申請されたのだが、それまで特に海峡に名前がついておらず、その時初めて「土」庄町の「渕」崎地区で「土渕」という言葉を作り命名されたらしい。だいぶユニークな場所だ。
私は5秒くらいで海峡の横断を達成すると、その足で土庄町役場へと向かった。ここに向かうと、海峡横断の証明書がもらえる(有料:100円)ということが書いてあったからだ。

休日であっても宿直室に回れば発行してもらえるとのことだったので行くと、職員の人が応対してくれた。発行日と横断時間を手書きで記載してくれるとのことだったが、時分に関しては覚えていないので発行時間にしてもらった。

町役場裏側の宿直室

証明書

証明書を貰った後は、オリーブタウンというショッピングセンターを横目に見ながら再度土渕海峡を渡って小豆島側に戻った。街を散策しようと思ったのだけれど、同時に小腹が空いていたので何か食事ができる店がないか探して、入ることにした。
小豆島と言えば、オリーブとそうめんである、と私は思っているのでそれらのどちらかが食べられる店を……と探していたが、いかんせん16時半という半端な時間だったのでなかなか空いている店がない中で、1軒面白そうな店を見つけたのでそこに入ることにした。

なんと、そうめんを使ったパスタを出す店だという。オリーブかそうめんをと思っていたところに両方食べられる店が見つかったのは良かった。

一人で回している店だったので、入店時に提供に時間がかかる旨を告げられたが、それなりに暇があったので承諾し、ゆっくりと提供を待った。17時半のバスで土庄港に戻る予定だったので、1時間くらい余裕があるので大丈夫だろうと思ったのだ。

ペペロンチーノのセットを頼むと、なぜかスープとサラダのほかにたこ焼きが3個付いてきた。このたこ焼きが結構美味しかった。どうももともとはたこ焼きの店だったらしく、その時代の写真なんかが店内に飾ってあった。TVに出たこともあるらしい。なかなか面白い店だった。
そうめんパスタであるペペロンチーノは結局40分くらいして提供された。ボリュームとしてはかなり軽めだったけれど、たこ焼きのおかげでちょうどいい感じだった。味は結構濃い目だったけれど、そうめんに合わせるにはちょうどいい感じだった。新しい味で、美味しかった。なかなか出てこないことを除けばいい店だった。まあ、タイミングが悪かったのだろう。

たこやきの味付けは自分でするタイプだった

ペペロンチーノ(そうめん)


そうして小腹を満たした後は、残った時間で周辺の街並みを散策してからバスで土庄港に戻った。岡山駅のフェリー乗船券を確保する必要があったので列に並び、購入する。お土産は事前に買っていたので追加購入せず、18時半発のフェリーに出航20分前からさっさと乗り込んでしまった。



<土庄港(小豆島) 18:30発 国際両備フェリー ⇒ 新岡山港 19:40>

今度は70分の船旅である。
大型のフェリーだったので、今度はデッキに上がって外の風を浴びることができた。これならほぼ確実に酔わないので、私はずっとデッキに上がったままで過ごした。
最速で乗り込んだのでまだデッキに誰もいなかったので、早々に一番前の位置を確保し、出航を待った。

こいのぼりが掲げられていた

出航すると、しばらく船が夕日の方向に向かって進んだ。方向を変えるたびに、夕日が船の右側に行ったり、左側に行ったりした。私はずっと右側にいたので夕日がこちら側に向いたときだけ写真を撮ったりしていたのだけれど、乗客の多くは夕日の方向が変わるたびにぞろぞろと移動をして写真を撮っていたのが面白かった。



そんな人たちも、日が暮れると客席に戻っていった。日中に比べて寒く、海の上は風もあるのでほとんどの人は暖かい客室内に戻ったが、私は中に入ると船酔いするので、ずっと外にいた。さすがに後半寒くなってきたが、ベンチに腰かけて身体を縮めたりしながら耐えた。

だんだんと日が暮れて暗くなっていく

寒い中、近づいてくる岡山側の景色を眺めながら過ごした。結構陸地が近いので、電波もちゃんと入ったので、今どのあたりにいるのかはっきりわかったので、地図と見比べたりしていた。
ちょっとだけ工場夜景みたいなものも楽しめたが、もう5月なので案外日が暮れるのが遅く、ずっと空が薄ら明るかった。
でも私はそういった暮れかけのあの群青色の空の色が好きなので、日が暮れた後の太陽の橙の残りとのグラデーションを眺めたりしていた。とにかく暇だったので、いろいろなことを考えながら時間をつぶした。

そうしてフェリーは新岡山港に入港した。

すっかり夜に


<新岡山港 19:50発 岡電バス新岡山港線 ⇒ 岡山駅 20:27着>

新岡山港からはバスで岡山駅へ戻った。

このバスが一番混雑していて、そして一番長く感じた時間だった。乗客が多すぎたので、途中で降車したい人はまず後ろのドアから降りて、外を経由して前のドアから入り清算をしていた。私は運よく早めにバスの列に並んでいたので座ることができたけれど、立ちっぱなしの日とは結構大変だったと思う。

やや渋滞気味だったので予定より5,6分くらい遅れて岡山駅に到着した。

帰還


<行程終了>

これでこの日の私の行程は終了だ。私にとってはなかなかハードな行程であったが、他の参加者3名の行程はさらにハードなものだったようで、私が一番遅く出発して私が一番先に帰って来るといった具合だった。
次に帰ってきた人でも22時を回っており、遅い人は結局岡山駅に23時半近い時間だった。なかなかにハードな旅程だったようだ。

風呂等済ませて0時過ぎからホテルで反省会という名の感想戦を行ったが、盛り上がりすぎて結局3時くらいまでずっと話していたと思う。とにかく盛り上がった。
「旅程を他人に押し付けろ! ~行程シャッフルフェスティバル~」は、
①旅程作成
②旅程交換
③旅程実施
感想戦
の4段階に分かれていたわけだが、全部面白すぎて感想戦がいつまでたっても終わらなかった。作成者を伏せていたので事前に話せなかった旅程の意図を話したり、逆に実行者から作成者へのツッコミがあったりなど、とにかく話題が尽きなかった。

ここでは私の実施した旅程について書いてきたが、それぞれの旅程についてはそれぞれ実施してきたメンバーが何かどこかで書いてくれる……のではないかと勝手に期待している。まあ、私の作った旅程についてはどこかで話すかもしれないが、あくまで私が組んだのは旅程であり、実際に行動する人が肉付けしたりしたものもあって興味深い結果になっている。
まあ私だって勝手に肉付けしているし、旅程自体も皆それを許容する形になっているものだ。
他人の旅程を押し付けるとどうなるのか、あるいは押し付けられるとどうなるのか、というのを見る企画でもあるので、適度な肉付けや改変についても目論見通りだと言えると思う。肉付けにも個性があっていいと思う。

私以外は、「初手から九州に飛ばされて船で帰ってきた人」や「四国を半周した人」、「中国山地を往復した人」がいたので、なかなかバリエーションに飛んでいる結果になったと言えよう。

ちなみに、Twitter上で「#行程シャッフルフェスティバル」を付けてつぶやいているので、興味がある人は眺めてみると面白いかもしれない。最新順にツイートを並べて時系列順に見ると、どんな感じで移動したのか垣間見れると思う。


かなり面白い企画だったので、またやりたい。やるだろう、と思う。

この企画、真似してもらうのは全然問題ないのだけれど、我々のようにハードな旅程を作って交換する場合はちゃんと実行できそうなメンバーで開催しないと結構大変というか、変なヘイトを集めることになるので注意したほうがいいと思う。
今回参加の4名は割と普段から無茶気味な旅行をする(8時間で中国道を横断した後岩国まで戻ってくるとか)メンバーなのでハードなスケジュールでもこなせてしまったのと、天気が良く大きなトラブルもなかったので何とかなっているが、結構注意すべき点は多いので事前にいろいろ考慮と打ち合わせ・すり合わせをしたほうが良いと思う。切符等を現金で買うというのが今回結構ミソみたいなところがあって、現金購入の切符であれば乗車変更等の対応が簡単なのでトラブル対応が容易であるからだ。まあ前回のレギュレーション記載の記事を見て貰えればいいと思う。


長くなったが、ひとまずこれくらいで終わりとしたい。
また言及したり別の話を書いたりするかもしれないが、まあ、どうだろう?

 

行程詳細

こんな具合に解説付きだった

 

追記:別視点

ihcamok3e.hatenablog.com

 

gonzalez.hatenablog.jp