言葉のリハビリ場

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大泉というブラジルの雰囲気がある町に行った話


群馬県大泉町は人口約41000人の自治体で、そのうち約19%が外国出身者が占めるという特殊な町だ。特にその中でもブラジル・ペルーなどの南米の日系人が多いというのが特徴だ。1990年の入国管理法改正により日系人雇用の機運が高まった(不法就労対策で外国人雇用は厳しくなったが、日系人は逆に日本で働きやすくなった)。大泉町の企業は独自の組織を作ってブラジル等で働き手を募り、その結果、この町には沢山の南米の日系人が移住してくることになったそうだ。
その数はSUBARUの本工場等を擁する隣の太田市よりも多く、「日本最大のブラジルタウン」と言えば大泉町の事ということになる。

ということで、大泉町に行ってきた。日帰り小旅行である。
仕事の都合で何度も車で通ったことはあったのだけれど、本格的に歩いてまわるのは初めてのことである。

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東武小泉線西小泉駅

大泉町」という町の名前なのだけれど、降り立った駅は「西小泉」だ。元々小泉町と大川村という2つの自治体だったのが合併し、頭文字を取って「大泉」となった。けれども地名としての小泉は生きているので、大泉町の小泉町というややこしい状況になっている。路線名も東武小泉線、駅も東小泉・小泉町・西小泉となっているので、合併からもう65年大泉の小泉という状況のままであるらしい。

駅を出て振り返ると、まずいきなり駅舎がブラジルカラーである。

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2017年にこの駅舎になったらしいけれど、まだまだずいぶん新しく見える。
反対を向くとこんな感じの看板があったりもする。

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読めないけど雰囲気はブラジル感

この画角でなければ結構普通の街並みだったりはするのだけれど、上手い事切り取るとこんな感じで外国っぽい。

そして駅横の広場にはこんな注意看板が。

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日本語の下はポルトガル語である。英語や中国・韓国語よりも圧倒的にポルトガル語話者が多いというところが、このような看板からも見て取れるので面白いものだ。
大泉、思ったよりずっとブラジル感がある。日本の普通の街並みにこういうものがしれっと混ざっているところが特にその歴史の長さをうかがわせる。


昼ご飯を食べる店は事前に調べてあったのでそこに向かうが、目的地の手前にこんな店を見つけた。

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「Restaurant Big Beef」

アサイーハンバーガーのお店である。

アサイーは実はブラジル原産なので、本場ということになるようだ。全然知らなかった。
ハンバーガーもよくよくメニューを見てみると独特なものが多い。一瞬アメリカを感じるものの、挟まれている具材などを見ると確かにちょっと他ではあまり見ないような内容である。目的の店が「食事のボリュームがすごい」と聞いていたので今回立ち寄らなかったけれど、アサイージュースくらい飲んでも良かったかもしれない。しれないが、食後にもここに寄るだけの余裕は正直なかった。


ということで目的の店へ。

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「カミナルア Bar & Restaurant」


この店、実は元プロ野球選手(中日ドラゴンズ)の瀬間仲ノルベルトさんの経営する店だ。彼も日系ブラジル人である。出身はサンパウロで、プロ野球を引退してからこの町に移り住んだそうだ。

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プロ野球選手時代は3年だけだったが、たまたま2003年~2005年の選手名鑑を持っていた私には、中日ドラゴンズのページでのおなじみの選手であった。アテネオリンピックのブラジル代表としても試合に出ていたから、余計に印象に残っている。高校時代に甲子園で活躍した選手でもあるので、そのあたりのファンにもおなじみの選手だったようだ。
先日、バンテリンドーム(ナゴヤドーム)に行った時にたまたまこの人の名前が出た。懐かしいなと思って調べたら、大泉でブラジル料理の店を経営しているという。面白そうだな、と思って大泉のことを色々調べるうちに、それならば足を運んでみようじゃないかと思うようになった。
なので、今回の大泉訪問のきっかけは完全に瀬間仲ノルベルトさんと言って良いと思う。
オーナー兼シェフでもあるというから、店に行けば本人に会えるかもしれないな、とぼんやり思っていた。思っていたら、店に入った瞬間にテラス席に瀬間仲さんが座っていた。びっくりした。彼はテラス席で、常連っぽい近所の日系人風の人たちと談笑しているところだったのだけれど、入り口にいる私を見つけて「いらっしゃいませ」と声を掛けてくれた。
帰り際にレジかなんかで「瀬間仲さんって、今日はいらっしゃるんですか?」とでも聞こうと思っていたのだけれど、まさか入り口脇に普通に居ると思わなかったので完全慌ててしまい、若干上ずった声で「せ、瀬間仲さんです、よね?」と聞いてしまったりした。
プロ野球ファン(中日ファンではないが)であることや、昔名前を見たことがある(冷静に考えるとちょっと失礼な言い方だが)話などをして、その流れで入り口で一緒に写真を撮ってもらったりした。その後は、メニューについて細かく説明してもらったりもした。お店にお客さんがまだ少ない時間帯(11時半前くらいだった)ので、料理を食べている時に様子を見に来てくれたり、帰り際にも声を掛けてもらったりもした。めちゃくちゃサービスしてもらった。結構感激した。

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一番スタンダードなプレートたち

料理もなかなかすごかった。一通りどんなものが付いてくるかは口頭で説明してくれていたのだけれど、実際に提供してもらうとなかなか想像とは違ったものが出てきて面白かった。

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ピッカーニャ(PICANHA)セット

特に、左側半分に関しては全部「なんだかわからないけれど香辛料が効いていて美味しい」食べ物だった。上から、スープ、スープ、豆の煮込み、デザートという並びなのだけれど、全部正体は正直よくわからないのにめちゃくちゃに美味しかった。特に2番目のスープはほとんど固形の具沢山スープで、鶏肉と豆、玉ねぎ以外はどんな食材なのかわからなかったが一番美味しかった。
聞いていた通りの大ボリュームで、スープはお代わりできると聞いていたが結局しなかった。肉で隠れているが、この下にもご飯があった。ちゃんと食べられてよかったな、と思ったが、店を出ようと立ち上がったら思いのほかお腹がパンパンで笑ってしまった。恐るべしブラジル料理
これだけいろいろ盛っていて税込み1375円はなかなかすごいと思うし、平日ランチだともう1割安いらしい。
この店に限らず大抵の大泉のブラジル料理店は盛り付けが豪快だというので、なかなか凄いものだ。


店を出た後は腹ごなしもかねて、ブラジル用品スーパーまで歩く。と言っても、700mほどの距離だから10分くらいの行程だ。
普通に薬局や自転車屋などの普通の日本の古い建物が立ち並んでいる間に、ブラジル系のカフェやバーが混ざっていてそれなりにカオスである。カオスではあるが、なんというかこう全体的に生活感に溢れていて何も浮いていないのがまた面白い。
目的のスーパーも正面を向けばどーんとブラジル国旗が描かれているからそれとわかるけれど、別になんというか光景としては結構普通な感じだった。

 

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タカラスーパー 太田にも店があるらしい


何度かこの道は車で通ったことがあり明確に覚えているのだけれど、このスーパーのことも特に違和感なくスルーしたんだろうとしか思えない。この近所に用があって何度も通っているのにあんまりはっきりと覚えていないんだから、よほどだろう。まあ仕事が嫌でそれどころではなかったという話はあるが。

正面の外見もなかなかだが、中に入るとこれまたブラジル感がすごかった。

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充実の精肉コーナー

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どう考えても辛いジャム

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伝統的なお菓子らしいもの

私はあいにくブラジルに足を運んだことがないので「現地感」はわからないのだけれど、少なくとも日本の普通のスーパーのそれとはだいぶ違うので面白かった。
肉系の総菜類がだいぶ充実していた。というか魚介類に関してはないわけではないがほとんど見かけなかった。圧倒的に肉。でかい塊の肉というわけではなく、小分けになっている状態のものも多かった。そのあたりは結構日本っぽくなっているのかもしれない。

まあなぜか子豚の丸ごと冷凍したものも売っていたりしたが、26,000円もするスペイン産の子豚だったし、半分展示用な気がする。あるいは業務用だろうか。

たまに日本の商品が混ざっていたりもしたが、それはそれで一瞬気が付かなかったりする。パッケージもブラジル仕様になっているものが結構あるからだ。

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パッケージとかがない分野菜とかは結構普通に日本のものだな、という感じはした。

面白かったのは洗剤のコーナーだ。

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カラフルだし種類も多い

とにかくカラフルで、最初何かシロップやジュースなんじゃないかと思ったりもしたが、日本の洗剤が並んでいてやっと正体に気が付いた。なんでこんなにカラフルなんだろう。

何か買っていこうと思ったのだけれど、事前に調べていたお菓子等がなかったので、目に付いたジュースと、それからハーブティーみたいなものを買った。そのうち家で試してみたいと思う。美味しいのかどうかは全くの未知数だ。


スーパーを出た後はまた歩いて西小泉の駅のほうに戻る。
駅前で「宮城商店」という小さなブラジル商店に寄ったが、ラインナップとしては先ほどのスーパーの商品と結構似ていた。

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「ブラジル・ペルー・ボリビア食品店」

小分けのお菓子とかが多かったのでコンビニみたいな感じだろうか。ホットスナックもちょっとだけ売られていた。
ブラジリアンプラザの建物にも寄ってみたけれど、営業しているかわからない状態だったので入らなかった。そもそも資料館は土曜日は開いていないというし、外見だけちらっと見て、そのあとはパンフレットだけもらって退散した。


というわけで大泉のブラジル散策はこんな感じだった。この後歩いて桜の名所である小泉城跡に行ったりしたのを合わせると3時間くらいだろうか、結構楽しめた。

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さすがにちょっと散り気味



私の胃袋がもっと強靭であればもっといろいろ食べられたのに、という思いはあるので、また足を運んで別の料理等にも挑戦してみたいところである。「孤独のグルメ」のシーズン2で紹介されていた店とかも行って見たいな。
大泉町(西小泉)は浅草から特急等乗っても2時間かからないくらいの距離なので、東京あたりからの手軽な小旅行には結構おすすめかもしれない。ちょっとニッチではあるけれど、こういう外国の雰囲気のが好きな人には合うと思う。
むしろ行きたい人が居たら声を掛けて欲しいくらいだ。私もまた行きたいので。

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営業していなかったのでよくわからなかったブラジリアンプラザ