言葉のリハビリ場

特にテーマはなく、ざっくばらんに書いています

どじょう鍋を食べた話

どじょう鍋という食べ物がある。「どぜう鍋」と書くが、まあ要するにどじょう鍋だ。3文字の方が縁起が良くて3枚の暖簾に書きやすいという理由で「どぜう」と表記するようになったとのことなので、まあなんか別に「どぜう」と書かなければならないということもあるまい(と思っている)。

さてそのどじょう鍋だが、これまで食べたことはない食べ物だけれど気になっている食べ物の一つであった。なぜ気になっているかと言えば、このところ妙にグルメ系の漫画によくどじょう鍋が登場していたからである。それぞれ全く別の時期に出た漫画なので、最近はやっているとかそういうことではたぶんなく、私がたまたま目にしたタイミングが立て続けであったがためのことだ。

まあどっちにしても要するに、私はそれなりにミーハーなのだ。

「知っているけれど食べたことがない」とか「外食を検討する際の導線にない」というセリフに対してはなるほどそうだなと思ったり、それとは別の酒飲み漫画では「ネギを乗せまくって食べるとうまい」とか「癖がなくて味がしっかりついていて酒に合う」だとかめちゃくちゃ褒められていてもう気になって気になって仕方がなくなってしまったのである。
「ぬる燗が合う」とか「ネギだけでもお替りできる(というせこい食べ方ができる)」とかそういうことを見れば見るほどもう、おいしそうで仕方がなくなってしまったのだ。
気になるけど食べたことないがそのうち機会があれば……くらいに思っていたものが、にわかに、よしもう今度食べに行ってみようじゃないか、というところまで盛り上がっていったのである。

そういうわけで、浅草に行ってどじょう鍋を体験してきた。しかもせっかくなので、どじょう鍋の本丸みたいなところに行ってきた。

一人だと微妙かと思って、2人ほど仲間を募って乗り込んでいったのだけれど、2人とも別の店ではあるが既にどじょう鍋そのものは食べたことがあるということだった。私が完全初体験、あとの2人が店が初体験という、そういったメンバーになったということだ。

f:id:fwbc0416:20210413203630j:plain

駒形どぜう(本店)※支店は最近閉店したらしい

お店はバンダイ本社ビルの真横という場所に立地していて、割と普通のビルが多い中にポツンといかにもと言った風体で立っている。もちろん雰囲気のために管理して残していった結果のものだと思うのだけれど、遠くから見るとなかなか不思議な光景だ。蔵前の駅の方向、つまりバンダイ本社側から歩いてきたので、交差点に差し掛かるまでは店の構えを見ることができず、ただ看板だけは遠くからはっきりとよく見えるような塩梅である。

f:id:fwbc0416:20210413203723j:plain

1階は平らなところに板が渡してあって、その上で食べるスタイル

値段がそこそこすることは事前に公式HPのお品書き見て分かっていたので、開き直っていろいろ頼んでしまうことにした。
写真に残すのは忘れたが、鯉の洗いとさらしくじらを頼んで食べながら、どじょうの丸鍋の到着を待ったのである。

そうしてやってきたどじょう鍋。ネギを乗せる前の状態はちょっとばかしグロテスクだ。

f:id:fwbc0416:20210413203840j:plain

直径20cmくらいの大きさの丸鍋

けれども、もうこの時点で割り下の美味しそうな香りが漂ってきており、期待はかなり高まっていった。
ささがきごぼう(有料)とネギ(無料)をのせて火を通して、しんなりしてきたら食べごろだという。

ネギだけでもいいのかとも思ったけれども、せっかくなのでごぼうも頼んだのだ。

f:id:fwbc0416:20210413203924j:plain

これでも多少整えたほう


どうでもいいことだけれど、ネギをきれいに乗せるのは難しいもんだね。鍋が浅くて平らなので、どじょうの上から積み上げようとするのはそれなりに難しさがある。公式HPだと控えめに乗せている写真が載っているけれど、きれいに見せるにはあれくらいがいいんだろうね。でもまあ、写真とかをいろいろ見てみたら、みんな器用に乗せているもんなんだよな。修業が足らないというか、私が不器用というか……まあ両方か。
焦げやすいので適度に割り下を入れてくださいね、と注意を受けつつ、ネギがしんなりしてきた様子を見計らっていよいよどじょう鍋を実食してみた。


これがもう非常においしかった。どじょうには全然癖がないし、とても柔らかい。骨はあるけれどそのまま全部食べられてしまう。もっとゴリゴリの川魚感があるのかと思いきや、ふわふわで割り下のしみ込んだ実に食べやすい味だった。

ネギも合うし、ごぼうはもっと合う。さすが課金アイテムである。ちゃんと火を通す必要はあるけれど、しんなりして味が良く絡んだごぼうは本当に美味しい。

定食メニューを選ばなかったので同時については来なかったけれど、ご飯と一緒に食べたらめちゃくちゃおいしいだろうな、とも思った。なのでもちろん、酒に合う。非常に合う。山椒と七味があるのでそれぞれ試してみたけれど、これもまた合わないわけがないね。個人的には丸鍋には七味の方が好きかな、とも思ったけれど、どっちも正直美味しいので問題なかった。
値が張るだけに、「あんまりおいしくなかったらどうしよう」とか「口に合わないタイプのものだったらどうしよう」なんて思ったりもしたけれど、これはもう食べに行って本当によかった。


どじょうをあっという間に平らげて、それからごぼうとネギだけの鍋を一回やってみたりもした。やっていることはなかなかせせこましいことだけれど、十分おいしい。ただ思ったよりも多くの量は乗らないのと、それからすぐにしんなりしてきてしまうので、これで満足感を出そうというのはちょっと難しい。次を頼むまでの合間につまむのにはぴったりだけれど、やっぱり本体のどじょうが欲しくなってしまうもんだ。
そういうわけでもう1度丸鍋をお替り(ささがきごぼうも再度頼んだ)して、それから柳川鍋も頼んだりした。

f:id:fwbc0416:20210413204302j:plain

どじょうの柳川。ささがきごぼうはデフォルトで入っている

こちらは開いたどじょうをごぼうと合わせて卵でとじたものである。滅茶苦茶美味い。丸鍋とは別のジャンルの美味さ。

丸鍋よりもよりご飯向きの味で、どじょうは開かれたことによって少しウナギに風味が近くなっていていた。食べなかったけれど、かば焼きにしたらもっとウナギに近くなりそうだな、と思った。

最後の締めに、どじょう汁とご飯を頼んだ。普通のごはんではなくて、くじらご飯というちょっと珍しいものを頼んでみた。

f:id:fwbc0416:20210413204448j:plain



どじょう汁はこの日一番癖のある味で面白かった。まず結構甘いのだ。酒粕がいっぱい入っているというか、もはや甘酒のそれである。甘酒がたくさん入った味噌汁。たぶんそういう表現であっていると思う。そして味噌がかなり濃厚。

美味しいけれど、これはかなり人を選ぶ味だとも思う。

どじょう鍋は丸鍋に始まりどじょう汁に終わるのが定番だそうだけれど、締めにしてはなかなか濃厚なので、同時にご飯ものを頼んだのは正解だった。


くじらごはんというやつもこれまた珍しいものなのだけれど、どうも関西方面では割と伝統的に食されていた食べ物らしい。くじらの皮の部分を使ったもので、なかなか独特の風味である。さらしくじらでもくじらの皮の部分を食べていたのでそういう意味では面食らわなかったけれど、勝手に炊き込みご飯的なものを想像していたので驚いた。こういう食べ物なんだな。くじらとご飯の間に敷いてあったささがきごぼうに甘辛く味が付いていて、一緒に食べるとそれが美味しかった。
ご飯が思いのほかボリューミーだったので満腹になってしまったけれど、これまあ本当に定食でも美味しく食べられるだろうな、ということは全体を通して強く思った。

全体を通して、大満足だった。

次はぜひ定食メニューを試してみようかな、と思いつつ、メニューの中に「舞子丼」というのがあるのを見つけてしまい、後から調べるとこれは柳川鍋の内容をご飯に乗せたものだというから、ああこれもいいじゃないかと思ってしまっている。いやはやなかなか頻繁に通うことのできる価格帯の店ではないけれど、また是非来て食べたいなと、そう強く思ったわけだ。私の中のハードルは今回でかなり下がった。

 

しかしまあ、江戸時代にはどじょうというのはもっとありふれた、安価な食べ物だったというから面白いものである。今は結構貴重なのか、なかなかのお値段がする食べ物になってしまっている。

この辺はウナギとにたような感じなんだろうな。庶民の食べ物が、時代を経て高級な食べ物になっていっている感じ。


でもまあ、有名さばかりが先を行ってしまう観光地のお店なんかも結構ある中で、ちゃんとお金を出してちゃんと良いものに巡り合えた感じがあって、良い体験ができた。
こういうときばかりは、多少ミーハーな感じで出かけていくのもいいもんだよね。

f:id:fwbc0416:20210413204720j:plain

 

 ※どじょう鍋のついでに浅草橋で寄った

fwbc0416.hatenablog.com