北海道で食べすぎた話Re:
旅行に出かけるとついつい食べ過ぎてしまう。どうしてだろうと言われても、まあ食事をしに旅行に出ている面があるからじゃないの、としか言いようがない。ともかく食べることは楽しいことだ。普段の生活でもそうだけれど、別の土地に出かけるとなおさらそうだ。
そんなわけで、この間北海道に行った時もずいぶんと食べすぎてしまった。
北海道は魔境である。食べたいものがたくさんある。だから食べすぎてしまう。わかっちゃいるけどやめられない。
……どこかで書いた導入だ。そう。また、北海道である。北海道。いいよね。いいんだ。また行きたいね。
この日は珍しく午後からの出立だった。理由は簡単で、平日だったからだ。全休ではなく午後半休を取得しての旅行である。午後半休というのは午前半休に比べて圧倒的にお得でいいね。だって、午前半休はそもそも時間が短いし、午後から出勤しても残業したら結局休んだ分仕事してしまったりして、まあそんなに意味がなかったりするわけで。午後半休はお得。どうせ消化するなら午後半休。
話がずれた。そういうわけで午後からのお出かけである。
中途半端な時間であったが、小腹が空いたので最初の食事とした。
17時くらいだから夕食には早いし、でも夕飯はこれからちょっと時間が空くので……というラーメンである。好きなんだ、ラーメン。
本当はちょっとしたご飯ものが食べたいところではあったけれど、時間が中途半端すぎて売店のご飯の類は全滅していた。みんな考えることは似たようなもんだね。売店では弁当コーナーやおにぎりのコーナーを覗いては首を振って出ていく人だらけだった。
飲食店であっても、時期的にランチだけの営業の店も多く、保安検査場を過ぎてしまってから食事にありつける店というのは案外貴重だったりしたのである。
それでまあラーメンは食べたのだけれど、小ラーメンだったのでまた夜になれば腹が減る。
飛行機で新千歳空港へ向かってからどうするか、という話である。
じゃあどうしたのか。決まっている、夕食である。夕食を食べた。札幌駅に出て簡単に夕食をとることにしたのだ。
この日の最終的な予定は旭川に行くことだった。実は、飛行機を取った段階では新千歳空港に降り立って、それから千歳か札幌で泊ればいいなと思っていたのだけれど、翌日の予定を考えてやっぱり旭川に泊まることになったのである。
旭川泊なのに新千歳空港着。ほぼ同時刻に旭川空港行きの飛行機もあったが、面倒臭いので取り直さなかった。そう。新千歳から札幌経由で旭川まで陸路で向かうことにしたのである。
新千歳空港は午後19時15分着。そこから札幌に出て、特急に乗り換えて旭川へ。ただし、札幌での接続が悪くて1時間待ちになる。特急列車のダイヤと、新千歳空港からのエアポート快速のダイヤがうまくかみ合っていない結果である。そのため、札幌駅で無駄な時間ができる。
じゃあまあそこで夜ご飯を食べるのがいいよね、ということである。
札幌駅の食事というと真っ先に思いつくのが寿司なのであるが(札幌駅のビルには好きな寿司屋である「根室花まる」の系列が2つも入っているのだ)、人気店であるゆえに1時間弱しか余裕がないと決まっているときに入るには少し分が悪い。それに、札幌駅では翌日の切符調達のためにみどりの窓口に行く必要があった。なので、改札を出てすぐ用事を済ませ、再び改札に入りなおしてから何か食べることにした。
札幌駅構内にはいくつか飲食店が入っているが、選んだのはそばの店である。
「蕎麦紀行」という幌加内そばの店だ。この店は駅構内という立地にありながら、注文してからそばをゆで始めるという割合に本格的な店だ。それでいて入りやすい気軽な感じの店である。
入場券を見せればその分飲食代割引というサービスをやっている店らしく、わざわざこのために改札に入ってくる人がいるくらい人気のようである。
味も文句なくおいしい。薬味にはわさびの代わりに北海道では定番の山わさびである。ローストビーフとかについてくるホースラディッシュが山わさびのことである。山わさびは醤油漬けにして食べたりするものなので、もちろんそばとの相性も抜群だ。
そして何よりも北海道でしかなかなか見かけないこともあって「北海道」という感じを手軽に味わえるのでいい。
17時に軽食のラーメンを食べたうえで20時にそば。まあ行ける行ける。行けるどころかそばはあっさり食べられてしまうのでまだ何か食べられそうな感じさえある。じゃあどうするか?
こうである。
札幌駅構内にはロッテリアがあるのだ。そば屋の向かいである。そば屋に入る時に見えてたんだよね。どっちにするか迷ったらどっちも取る。それでいいと思う。出来るのであれば。
合わせるのはサッポロビールである。一度やってみたかったんだ、ビールとポテトとチキンの組み合わせ。
旭川に到着するのは23時過ぎであったので、まあそれなら電車の中で飲んでしまえ、ということだ。普段電車でお酒を飲まないのでなかなか新鮮だった。
この日は日付が変わる前くらいにホテルに入って一泊。
※泊まったホテルは、一人なのに案内された部屋がツインだったのはまだいいが、ベッドが異様に細かった。寝返りが打てないくらい。
翌日は朝早く起きて旭川から留萌へ。乗り潰し目的ということもあり、すぐ折り返してまた旭川へ。
これだけで午前中は終わって、ちょっと早めの昼ご飯とした。距離で言うとそこそこの区間を移動しているのだが、旭川から旭川へ戻ってきたのでちょっと変な感じだ。
それはそうと昼の旭川ラーメンである。この店は「蜂屋」と言って、かつて新横浜のラーメン博物館に出店していたこともある、旭川ラーメンの代表的な店である。焦がしラードが特徴のラーメンで、店に入るやいなや独特のラードの匂いに包まれる。
とても懐かしい。昔ラーメン博物館で食べたときはこのにおいにびっくりしたもんだ。今回は当時ほど強烈に思わなかったのはたぶん、あれから10年以上たって濃いラーメンがたくさん出てきたからなのかな? わかんないけれど。
私は普通の醤油味のラーメンを食べたけれど、向かいで頼んでたつけ麺はすごいボリュームだったな。
昼ごはんのあとは富良野線に乗ってゆっくり南下である。途中、美瑛の先、ラベンダー畑を遠くに拝む。たぶん近づいたら一面に広がるラベンダー畑を楽しめるんだろうな、とわかっていたけれど、ぼんやりしているうちに列車を降り損ねてそのまま富良野へ。なのでラベンダーに関してはこんな写真しかない。
まあラベンダーを見る予定は特になかったからなんだけれど。
着いた富良野ではソフトクリームを食べた。
美味かった。美味かったけれど、頭が痛くなった。一気に食べるから。
富良野からは今年引退のノースレインボーエクスプレスという車両の特急で札幌へ。
そして夜はそのままジンギスカンを……と行きたかったのだが、ラストオーダーに間に合わず。なので同じ肉ということで、ヴィクトリアステーション(ハンバーグとかステーキのファミレス的なところ)へ向かう。
ヴィクトリアステーションはかつては北海道のローカルチェーンだったようだが、ビッグボーイと合併してからはビッグボーイの1ブランドとして営業されているらしい。
200gのステーキを頼んだら300gのステーキが出てきたき、気が付かずに全部食べて支払いの時に気が付いたりといろいろあったが特に写真はない。忘れた。
この日は新札幌で宿泊。
翌日は札幌から小樽方面へ。函館本線の旅である。
小樽ではこれ。
青塚食堂の巨大なニシンである。
そしてその巨大ニシン付きの定食である。
まあでかい。びっくりするくらいでかいのに、隣でこれに加えてホッケを頼んでいたのでこれまたすごい(写真の左上のやつ)。
次来たときはにしんを遠慮して、その代わりに刺身定食を軸にウニとか牡蠣とかホタテとかを積んでみたい。メニューありすぎて食べきれない。イカ刺しとか食べてる人がいたけれど、あれも美味しそうだったな。
小樽駅に戻る途中でアイスクリーム。
この日の小樽は暑かった。アイスが染みるね。そして頭が痛くなる。一気に食べないと溶けるんだもの……。
そのまま小樽からも函館本線である。南下して長万部駅で下車。そこから交通手段がないのでタクシーを呼んで「浜チャンポン」の店へ行く。
タクシーで乗り付けたのが珍しかったらしく、店の人に「どこから来たの」と話しかけられるなどする。うまく答えられなかったけれど。
そうこうしているうちに出てきた「浜チャンポン」がこれである。
具材が非常に豪快だった。まずイカ。これがでかい。丸々1杯のイカ。そしてエビと剥いたカニ。ホッキ貝もなかなかでかい。ツブ貝もなかなかの歯ごたえ。ホタテも肉厚。これで1000円しないんだからすごい話だ。食べ応え抜群だし、タクシーで乗り付けただけのかいはあった。
餡掛け焼そばも名物らしく、美味そうだったのでまた食べに行きたい。地元っぽい人でいっぱいの店だった。
帰りはタクシーを使わず、長万部一つ手前の無人駅から帰ったのだけれど蚊柱に襲われたりしながら列車を待って、それから札幌方面へと帰った。
※ホテルは連泊だったが、帰ったらスリッパが1足になっていた。なんで?
翌朝はホテルの朝食である。バイキング形式だ。正確には、小鉢に持ってあるものを適当に組み合わせて取っていくやつ。
中華粥があったのでそれをメインに食べたけれど、案外美味しかった。
この日足を運んだのはこの施設である。
ウポポイ。早い話がアイヌ文化の総合観光施設である。もともとこの辺りにあった観光施設を改造して国営の施設として作ったものらしい。オープンしたばかりだったのでなかなか盛況であった。入場に必要な予約が取れないくらいの人気である。かくいう私も予約が取れなかったため、入り口のレストランで食事だけしてきた。というかまあもともと食事をしに行ったようなもんなんだけれど。
ちょっと高そうな、おしゃれな店に入った。窓の向こうに見えるのは予約必須の有料エリアである。私のような無課金未予約民でも、レストランから中の様子を眺めることは許されている。
ランチはコースだけなんですよ、と言われたのでコース料理を頼む。鹿肉がメインのコースだ。
アイヌの食文化をベースにフレンチ出身のシェフが腕を振るいますよ、という説明から始まり、すべての料理に対して解説が付いた。なかなか面白いものである。
これはスープ。入れ物が独特だけれど、中身は根菜がたくさん入っているスープで、すごく素朴で上品な味。
周りの雰囲気もあってなんとなくしずしずと、上品に料理を口に運んでしまう。
魚料理はマスである。
「アイヌというと鮭のイメージが強いですけれどマスも食べますよ」という解説も入る。まあ確かに鮭を献上する図とかは江戸時代の絵として見たことがある。マスもなるほど似ているわけだし、まあ食べるよね。
マスは美味しかったが、マスの下に敷いてあったパプリカが非常に美味しかった。
ワインを飲みつつ解説に耳を傾け、なるほどそうですかという感じの顔を作りながらゆっくり食べる。一つ一つの料理がどれも美味しい。どれも素朴で、繊細で、自然な感じで、あとはどこかちょっと気取った感じの料理である。ちょっとよそ行きの料理。もてなされてるんだろうな、って感じの料理。ハレの料理っていうのかな、こういうの。
さすがアイヌというよりはさすがフレンチという感じの、ちょっと背筋が伸びる感じ。
ところが、急に次の料理からワイルド路線になる。
鹿肉のステーキと、同じく鹿肉の骨付き肉である。骨付き肉は弾力があるので直接手で持ってかじりついて食べてください、と解説が入る。なるほど確かに食べてみるとかなり歯ごたえがあって、そして身離れが悪い。肉質としてはかなり固い部類に入るだろう。ただその固さというかワイルドも相まって非常に「肉を食らっている」という感覚にさせられる逸品だった。美味しいけれど、たぶん歯が悪い人は食べられないだろうな。美味い。
これまでの背筋を貼った感じなんか忘れて、骨に向かって食らいつく感じ、全然嫌いじゃない。むしろ好きだ。手は汚れたけれど、野生の肉を食べたなって感じがすごくしたので良かった。
デザートとお茶(よもぎ茶、ものすごく美味しかったのでどこかで売っているか探したが、ない)で〆て食事はおしまい。4千円くらい使ったけれど(ワインを飲んだからだと思う)かなり有意義な食事体験ができたな、と思った。これはいいね。
ただまあ次に来るときはウポポイの有料エリアに入りたいものだ。無料エリアはレストランとお土産屋しかないから。
……とまあさんざん飲み食いしたのに、この後入ったのはミスドである。ドーナツとコーヒー。
食べたくなったので。
この日はもう帰る日だったので空港に向かう。新千歳空港ではまだ夕飯には早い時間だったものの、どうしても寿司が食べたくなったのでつまみに行く。
美味い。
バフンウニとムラサキウニ、両方食べてしまった。
締めはやっぱり寿司なのである。
こうして今回も、旅行先で食い倒れてしまったわけだ。
……この間も食べすぎてるな。
でもまあ、こういう旅もいいよね。