青南蛮の味噌漬け
青南蛮の味噌漬け、と聞いてピンとくる人がどれだけいるだろうか。仙台名物牛タンの付け合わせに出てくる、あの辛い唐辛子の味噌漬けのことである。
かくいう私の大好物だ。
そもそも私の好きなものと言えば白いご飯のお供である。例を挙げるなら、イカの塩辛だとか、辛子明太子だとか。これがあればご飯がいくらでも行けるな、と言うものが好みである訳で、青南蛮の味噌漬けもその中の一つである。
当然だが、唐辛子であるゆえに、辛さはかなりのものだ。少し咀嚼しただけで、口の中から熱くなるような感覚に襲われる。物によっては「口から火を吹く」というような表現ができるほど辛いものもある。その上で味噌漬けになっているから塩辛くなっていて、ご飯とよく合うわけである。ピリっと辛くて味噌味の塩辛さ、ご飯に合わないわけがない。
ところがこの青南蛮の味噌漬け、あまり人気があるという話を聞かない。それどころか、いらないという声さえ聞く。何人かで牛タンを食べに行くと必ずこれが苦手な人がいるくらいだ。私はそういう人から食べないならもったいないと譲り受けたことすらある。
どうやら青南蛮好きは割合に異端児であるらしい。
まあ味噌漬けになっているとはいえ、唐辛子を丸かじりしているようなものだから、普通ではないのは確かだ。私だって辛い物は得意ではない。でも味噌漬けならば行ける。白米と一緒に口にすればなんてことはない。確かに辛いけれど、顔をゆがめたりするほどではない。良いアクセントくらいに感じるのだけれど、どうもそうとは思ってもらえないようだ。なぜだろう。
思い当たる節はないこともない。青南蛮の味噌漬け、この食べ物はあくまで付け合わせとして出てくるわけだ。牛タンの付け合わせとしては、あまりに白米を「食って」しまうからどうしても印象が悪いのかもしれない。牛タンでご飯を食べようと思っているから、別のものにリソースを割く余裕がない。なのにこの青南蛮はたくさんのご飯を持っていく素質がある。とろろが一緒についているセットならばなおさらだ。青南蛮は他の漬物同様に、軽く口に放り込まれる。だが青南蛮は唐辛子そのものだからとても辛い。単品で口に入れたならなおさらだ。不意打ちのようにやられてしまえばそりゃあ印象が悪いだろう。付け合わせであるがゆえの悲劇である。構えていればさほどでもないものを。
だから、この青南蛮そのものをメインとして買おうなんて選択肢が生まれてくるわけがないのだ。発想すらないのかもしれない。事実、仙台駅構内で購入すべく探しまわってもなかなか見つからない。牛タンの店、例えば利休だとかそういう所に行かないと確実に手にすることができないのだ。だから牛タンを食べに行ってその場で買う。これが正しい入手法なのである。
言ってみればこれも部類としては「珍味」であるということだろう。知る人ぞ知る味。多くの人には気にとめられなくても、私はこの味のために牛タンを食べ、そして青南蛮の味噌漬けを購入する。細々とで構わないから、せめて生産中止にだけはならないように頑張って欲しい今日この頃である。