言葉のリハビリ場

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駅弁あれこれとシウマイ弁当

その昔、それはJRがまだ国鉄だった時代には、「駅弁」と呼べるものへ細かな定義が存在していたという。ご飯と魚(焼き魚)、肉料理、フライ、卵焼き、かまぼこ等一般的な総菜を使った幕の内弁当のような普通弁当、あるいはますのすしや鯖の押し寿司のような物を含めた、幕の内弁当以外の米飯の入っている特殊な形態の弁当(特殊弁当)のみをいわゆる「駅弁」と呼んでいたらしい。
米が入ってなければ弁当でない! というのもなんだか横暴な話であるが、当時は結構大真面目に定義されていたことであるようだ。その証拠に、横浜駅で買える崎陽軒の特製シウマイには駅弁マークが付けられていない。だってご飯が入ってないから。いくらこれとビールとで食事をするのだとしても決して駅弁とは名乗れなかったらしい。その名残か知らないがシウマイ弁当のおかずは、上で書いた普通駅弁に定義されているおかずのほぼすべてが入っているわけである。メインの特製シウマイ(シュウマイではない)、の他にまぐろのやけ焼き、厚焼き卵、かまぼこ、唐揚げなどが入っているのは、いわゆる普通弁当を意識した形になっている。その上で調理方法をひねったり工夫したりして、また筍の煮たものなど珍しいものも入れた工夫した作りになっているのだ。もちろん小さく駅弁マークも包装紙の右上に入っている。味やバランスもそうだが、シウマイ弁当は駅弁たるためにあえて幕の内弁当の形式にこだわったとみてもよさそうだ。

ちなみに現代では駅弁そのものに特に大きな定義はなく、例えばそばを楽しめる長万部の弁当とかも駅弁の1つとして見ても特に問題はない。強いて言うなら駅弁マークがついたものならばこれは駅弁なんだなと分かるという程度で、厳密にこうでなくてはならないなんて定義はなくなったも同然である。だってコンビニ弁当だってご当地色があったりする時代だし、こだわる必要は特にないんじゃないかな、と私は思うわけである。なんなら私は駅で売ってすらいない弁当を持ちこんで食べることもある。北海道新幹線で東京方面へ向かう列車に乗り込んで、函館駅前の棒二森屋ハセガワストアで買ったやきとり弁当をいそいそと青函トンネルへ突っ込んでいく車内で食べたりしたって別にいいじゃないか、と。シウマイ弁当のように定番中の定番弁当も好きだし、そうでないものを食べることもある。駅弁かどうかは正直気にしてはいない。

シウマイ弁当の良さは安定感だ。いつ食べても同じ味。同じなのに飽きない。それどころか旅や出張の定番としてよく食べる。野球観戦の時の定番ですらある(横浜スタジアムや東京ドームなどで野球版の包装のものが売られている)。
冷めてもおいしい俵型のご飯。シウマイ一つずつに丁寧に醤油を付けて、余った分はかまぼことマグロにも少しつけて食べる。箸休めの紅生姜と昆布もまた立派なおかずだ。シウマイはホタテだしを使ったうま味たっぷりの味付け。筍の甘辛煮もたまらない。おかずの真ん中に据えられた干しあんずは最初に弁当のふたに避難させて、食後のデザートとしていただく派だ。
マグロや唐揚げを含めても脂っぽすぎないから、私は朝早く新幹線に乗って旅立つ時の朝食としていただいたりすることがある。重すぎず、かといって軽すぎることもない。普段の朝ご飯でこんなにたくさん食べることはないが、シウマイ弁当はそんな役割もこなしてくれる。万能ベテラン選手といったところだ。

定義なんて固いこと言わないで、食べ散らかしたり、周りに迷惑をかけたりしないように、とかそういうマナー面の事を気にするくらいで、あとは何を食べても、どう食べても、そんなに上げ足をとってやるなよとそう言いたいわけである、私は。