言葉のリハビリ場

特にテーマはなく、ざっくばらんに書いています

押し入れの扉の音は夏の訪れ

押し入れの扉は、開けるときに何とも言えない音が出る。たぶん金属のなんかの音だから、新しくないものだし油が足りないとかそういったことから起きている音だと思う。
夏になると、というか暑くなってくるとあまり音がしなくなってくる。開閉も心なしかスムーズだ。冬になると反対で、きしむような音は大きくなる。だから、私は押し入れの音があまりしなくなると、夏が近づいてきたんだな、と思うのである。


夏を感じるきっかけと言うのは実に様々なものだけれど、まさか押し入れの扉で感じている人はそういないと思う。他にいるなら結構感覚の似ている人なんだろう。

金属は暑いと膨張する。だから電車の走るレールのつなぎ目は、膨張しても良いくらいの隙間があいている。夏になると膨張して隙間が小さくなり、冬はその反対だ。あまりつなぎ目が大きすぎても冬に困るし、小さすぎても夏に困る。だから結構隙間は考えられて作られているんじゃないかと思う。隙間があるからこそ、電車はレールのつなぎ目を走る時に"ガタンゴトン"と音を立てて走るのである。極端な話つなぎ目の一切ないレールをずっとつなげれば音はしなくなるはずなのだ。実際新幹線などでは直線区間が長いからかつなぎ目の少ないロングレールが採用されていたりする。1500mとかそういう規模の話だ。1.5kmずっとつなぎ目がないのは普通にすごい。基本的には25mで量産されているのがレールと言うものらしいのだが、それを200mとかに溶接してから運んで、現地でそれをさらに1500mとかにしているらしい。まあ1.5kmもあったら運べないからね、普通。
ちなみに青函トンネルは年間通して温度も湿度もほとんど変わらないということで、54km分もひとつなぎになったレールが採用されている。54kmて。
つなぎ目は冬になれば広くなるから、当然"ガタンゴトン"の音も大きくなるはずだ。実際どうなんだろう。毎日電車に乗っていると違いがよくわからない。

押し入れの音とどう違うんだと言われるとうまく答えられないけれど、押し入れは明らかにわかるほど音が大きくなったり小さくなったりするのだ。それが私にとっての夏の始まりなのである。そういうものなのだ。

夏が来て暑くなるのはもう身体にダイレクトに伝わってくるのでそれは言われなくても夏だとわかる。わからされている。夏が私に夏をわからせにきている、そこに疑問を挟む余地はない。
押し入れの扉の音はあくまで"気づき"主体である。気づかなければ別にどうという事はない生活音である。あんまりうるさければ油とか差した方がいいんだろうな、とは思うけれど、もうここまできたら面倒くさいので壊れでもしない限り何もしない。絶対に。