言葉のリハビリ場

特にテーマはなく、ざっくばらんに書いています

微糖とは

微糖って結局どれくらい甘いのかどうかどうかわからないよな、と常々思っていたのだけれど、最近とうとう「甘くない微糖」とかいう表現の清涼飲料水が発売された。午後の紅茶の新しい商品である。

とうとう出てしまった。商品そのものの事ではない。「甘くない微糖」とかいう表現の方だ。「微糖」に「甘くない」が冠されるとは一体どういうことなのか。

気になったので買って飲んで見たのだけれど、本当に甘くない。甘い味をなんとなく感じないこともないけれど、それは牛乳とかを飲んだときになんとなく感じる甘みとよく似ている。そのくせ、「無糖」表記ではないので原材料名にはしっかり「砂糖」「甘味料」の文字がある。普通の午後の紅茶ミルクティーのだいたい半分くらいのカロリーであるのでまあ確かに砂糖の量は少ないのだろうけれど、入っている書かれているわりにはあまりに甘さを感じない。そんな代物だった。

甘くない微糖。本当に甘くないのに砂糖が含まれているのである。


微糖の飲み物は大抵「微」とか付いている癖に甘い物が多い。というか甘くない微糖のドリンクは正直飲んだことがない。代表的なのは缶コーヒーだろう。あれは基本的に甘い。微糖だろうが何だろうが、甘さそのものは正直変わらないような気さえする。変わるのは苦みだとか渋みだとかそういう要素の方だ。ひたすら甘いものから苦くてその上で甘いものなどいろいろあるが、まったく甘くなかったことなどほとんどない。記憶する限りでは全くないと言っても良いくらいだ。

だいたい微糖と書いてあるだけではどれくらい甘いのかよくわからないのがこの手のドリンクである。本当に甘くないものを飲むなら無糖と書かれているものだけが甘くないわけで、微糖ならそれはもう甘い飲み物。そういうものだ。幾度となく微糖という言葉には騙されてきたと憤るも、もはや微糖とは甘い飲み物の事なのである。

だから「甘くない微糖」とかいう良くわからない言葉が誕生してしまったのだ。微糖は甘いのである。甘くないけど微糖なのである。微糖は甘い。対義語は甘くない微糖。
「微糖って書いてあるけれど結局甘いんでしょ?」と裏を書く消費者を見事に裏切ってくれる斬新な商品である。


似たようなもので、もはや微糖ですらない言葉を採用しているメーカーもある。サントリーのクラフトボスのシリーズは「やさしいコク」とか書かれているのだ。
なんだそれは。甘いのか甘くないのか。それすら書いていない。あくまで「やさしいコク」である。

ここで言わんとしているのは、あくまで「微糖」などというものではないということなのだろう。微々たる量の砂糖は使っているけれども、飲料業界における微糖の範囲に含めるのは違うとでも思ったのか知らないけれど、甘すぎずすっきり飲みにくいとかのたまう「やさしいコク」なのである。


なんだそれは。甘さの指標と表現を統一してくれ。頼むから。


それにしても「やさしいコク」とはいかなるものなのか気になって飲んだけれど、「甘くない微糖」の甘さとほぼ同じくらいだった。要するにほとんど甘くない。甘くないのである。でも無糖ではないからそこまで健康的でもない。がぶ飲みしたら結局同じことだし。

微糖とそれ以外の区別はもうとっくに付いていないのだ。そして微糖と無糖の間には大きな距離があるということだ。微糖はもはや甘くないものではない。微糖は甘いものである。「微」とはもはや甘さの単位足りえないのだ。


「甘くない微糖」や「やさしいコク」。本当の事は誰にもわからない。甘さに限らず表現というのは余りに曖昧である。風味とかでも苦しいのが多々見受けられるし、言ったもん勝ち杉やしないだろうか。風味よりかは頭をひねって考え出した表現のように感じられるけれども、それはそれ、これはこれ。

結局甘いのかそうでないのかはっきりして欲しい。