言葉のリハビリ場

特にテーマはなく、ざっくばらんに書いています

ネットカフェに泊まるということ

ネットカフェは泊まれる。旅館営業法にのっとった宿泊施設ではないのでおおっぴらに宿泊を推奨することはなく、あくまで椅子に座った客が毛布を掛けて居眠りしている状態の事を、仮に宿泊と我々客が勝手に呼称している……というような、建前の上に成り立っている。ところがまあ、フルフラットシートと言う完全に寝転がれる個室型のシートがあって、毛布が貸し出されていればまあ宿泊的な用途に使おうと思えば普通に使えるものなのである。


私も何度かそういう目的で使ったことがある。一番多いパターンは、翌朝の始発列車に乗りたいとき。初めて泊まった時もそういった目的だった。あれは飲み会の後にそのまま旅行に出かけた時のことだ。どうしても家からだと目的地に着くのが遅くなってしまうし、飲み会帰りに家に戻るだけの時間が面倒に感じて、じゃあ泊まればいいのでは? となって利用した。

当時はぎりぎり成人していたものの、まだ車の免許は持っていなかった。身分証明証として使えるのは学生証や保険証くらいだったが、国公立の学校以外の学生証は身分証明証としてはしばしば不適当とされる。ネットカフェでは大抵初めて利用する店では身分証明証の提示が必要となる。私立大学生だった私は学生証を提示するも、1軒目に入ったネットカフェでは入店を断られた。椅子は空いているのに入れさせてもらえない。学生証じゃ不適当だ、と。健康保険証はあいにく家である。家から逆方向だしもう終電はないし、翌朝は始発列車に乗り込むつもりで来ているから、軽い絶望である。
野宿は嫌だと思いながらダメ元で2軒目に行くと同じように身分証明証の提示を求められ、学生証を見せるとまた入店を断られた。諦めかけて、でも一応理由を聞くと、「住所の記載のない証明書はダメ」都のことだったので、「裏に住所を手書きできるスペースがあるから今ここで書いたら入れてくれるか」と交渉して見ると、なぜかそれでOKという返事が返ってきた。

いやいやそれでいいのかよ、と思いつつも、いそいそと住所を書いて晴れて入店となったのである。初のネットカフェ宿泊は、そんな苦労と共にあった。


ネットカフェは安い。例えば上野の快活CLUBはナイトパック8時間のコースでわずか1,852円である。しかもシャワールームが15分間無料で使えるというおまけつきだ。23時に行って翌朝7時まで居座ってもそれだけの値段しかかからないと考えると、それはそれは安いものである。ついでにネットカフェなのでインターネットはし放題だし回線も速い。当たり前のように漫画も読み放題だし雑誌も置いている。ドリンクバー付きなのでもちろん飲み物は飲み放題だし、ソフトクリームも食べられる。ここまで含んで夜は8時間1,852円なのだから、まあお金が惜しければ泊まるよね、と言う話だ。

ただまあ、ホテルではないのでいろいろ残念な部分はある。
個室になっているとはいえ、完全に天井まで仕切ることは出来ないので、言ってみれば大部屋に適当に間仕切りをしただけの代物だ。音も臭いも全部伝わってくる。隣人どころかフロアのどこかの人のいびきだって平気で聞こえてくる。そういう場所だ。居眠りしていい場所ではあるけれど、寝る場所として最適ではない。睡眠はネットカフェにおいて目的外利用であるようなものだから、それで文句は言えない(いびきがうるさいというクレームくらいは入れられる)。今くらいの季節は空調が効いておらず、下手をすると窓を開けて直接換気をしていたりするので要注意だ。花粉症への配慮とかそういうものは全くなく、ただ窓が開け放たれている。そういう店にうっかりは言ってしまったことがあるけれど、昼間だったのでそのままマスクをして過ごしたけれど、あの環境で夜寝るとなったら最悪である。

ネットカフェは安いし、地方にもある。だから旅行中に使おうかと考えたこともあるけれど、結局私は試していない。知らないネットカフェはそれこそガチャを引くようなもので、当たりも外れもあるし当たっても所詮ネットカフェである。
私がビジネスホテル好きと言うこともあってのことだけれど、たぶんこれからも旅行先でネットカフェ宿泊はやらないだろう。