言葉のリハビリ場

特にテーマはなく、ざっくばらんに書いています

辛いもの

辛いものが苦手だという人がいる。そうとは知らずに一緒にタイ料理の店に入ってしまった。まあ先方の希望でもあったのでそれは仕方がないのだが、よくわからないままにカレーを頼んでしまった。それもグリーンカレーである。たぶん一番辛い奴だと思うそれを、辛いものが苦手だというカミングアウトともに一生懸命食べていた。ちょっと申し訳ない気持ちになった。申し訳なさついでに、どういう辛いものが苦手なのか聞いてみた。山椒の類は平気だそうで、中華的な辛さはわりと平気だという。ならば唐辛子単体の方が危ないのかと聞いてみればそうだと言う。
では仙台名物牛タン……ではなくその付け合わせである青南蛮の味噌漬けはどうだろうか、と聞いてみた。青唐辛子をまるごと使った味噌漬けであるから当然辛い。当然これも苦手であろうと高をくくっていたが、帰ってきた返答は意外なものだった。
「あれは辛いけど美味い。酒のつまみにもなるし」
まあ面白いものである。タイカレーはまるでダメだし、辛い物はそもそも苦手だと言ってはばからなかった彼も、なぜか青南蛮の味噌漬けは好きだと言う。辛いものが苦手でない人でさえ、あれは辛くて苦手だという人は存在するのにだ。

でもまあ自分自身に置き換えてみてもそういう事はある。食べれるからさとそうでないもの。私は「辛い物はほどほどに好きだが普段はあまり食べない類」の人間だが、青南蛮の味噌漬けは大好物である。でも坦々麺とかのあの真っ赤に染まったスープはさすがに食べられない。辛さにはそこそこ敏感だ。あの食べ物は辛いものが得意かどうかは関係ない食べ物なのかもしれないけれど、度合いも種類もいろいろバリエーションがあると言えよう。

私がそれなりに食べられる辛いものと言えば、唐辛子である。七味唐辛子は特に好きだ。温かいそばやうどんによく振り掛ける。松屋の牛丼についてくるアレも良い。家ではやらないけれど、豚汁に少し掛けるのも好きだ。ああいうちょっとした薬味の存在感が好きなのである。
同じような理由で、柚胡椒なんかも好きだ。あれは単体で結構塩味も効いているので、調味料としても使える。難点としては活用方法がほとんど思いつかないので小瓶ですらもてあますことだ。胡椒単体ならいろいろ使い道も思いつくのだが、柚胡椒はよくわかっていない。いっそ携帯でもすればいいのだろうか。例えばおでんとかを食べる度に使うとか。飽きるか。

逆に苦手なのはわさびである。寿司に入っている分くらいは食べるけれど、特に自分から付けようとは思わない。刺身も別にわさびはあってもなくてもいいと思っている。一度昔気仙沼で食べた寿司はすごくおいしかった事を覚えているのだけど、それ以上に鮮烈なわさびの香りにびっくりしたものだ。香りに驚いて鼻呼吸したらものすごいツーンとした。別にトラウマとかではないけれど、しばらくわさびが食べれなかった。たぶんフカヒレ寿司とかそういうわさびがものすごく目立つような寿司だったからだと思うけど、さすがにキツかった思い出がある。
量が過剰でなければ普通に食べることはできる。安曇野で食べたわさび丼なんかはその名の通りわさびがメインのどんぶりだ。わさびと、わさびの茎の漬物と、鰹節。醤油をかけてとにかく混ぜる。あの『孤独のグルメ』で紹介されたことのある伊豆かなんかのものと似たようなものだ。
入っている具材はシンプルで限りなくわさびなんだけれど、ちゃんと食べられる辛さでとても美味しかった。世の中何でも適量が一番である。わさびは用法用量を守れば美味しく食べられるけれど、それがある一定の許容量を超えて口に含んでしまうともう文字通り涙目になってしまうわけである。

たぶんそういった顔を店の人は見ているのかもしれない。最近気が付いたのだけど、立ち食い寿司の店で食べた一貫目のわさびが妙に効いてて涙目になっていたら、次からかなり量を減らしたものが出てきた。良く見てるもんだなぁと思うと同時に、ちょっと情けなかったかな、と思うなどした。でも涙目にならなくて済むのでそのまま食べ続けたわけである。

まあそういう時は我慢せずに少なくしてくれって言う方がお互い良いんだと思うけど、どうもね。